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2006.10.17 白黒
 以前旧ミニヨンにて語った、朝加伊織嬢及び友情出演としてかつで出演して頂いた白玖蛍嬢を交えての銀雨ことシルバーレインSSを書き終えた訳だが、

 さらっと書く。そう思っていた時期が俺にもありました。

 気付けば、何時もの理屈臭く詰め込みまくった長ったらしい文章に。一体全体ただの何でも無いちょっとした日常を書きたかっただけなのに何故こうなってしまうのか、我ながら不思議でならない。

 とは言え、決して手抜かりはしてません、と言い訳しつつ、さぁどうぞ。

 後、伊織嬢の背後さん。参加及び出演させて頂き、誠に感謝致します。実に実に実にらしい暁徒と、伊織嬢との掛け合いを楽しく読ませて頂きました、と遠距離レス。白玖蛍嬢も再出演感謝。

 次、ネタが浮かんだら、今度はう~ちゃんで書かせて貰おう。ぴょろり。
 沈み行く太陽は、世界を赤く染めて行く。
 時刻は午後の四時を過ぎた頃。
 秋の日は足早に東から西へと走って行く。
 もう一時間もすれば、今度は夜が全てを黒に染めるだろう。
 そうなっては敵わんと、私立銀誓館学園校舎からは帰路を急ぐ者達が歩み出てきた。

「♪~~♪~~」
 その中に紛れて、塩森暁徒が居た。
 紫のシャツの上から高等部冬用の制服を前止めずに羽織るだけに、胸ポケットに仕込んだmp3プレイヤーをヘッドフォンで聞きながら、校門の方へと早足に進んで行く。
 今日は楽しみにしていた映画DVD…タイトルはここで言っても一般の人は確実に知らないと思うので割愛させて頂く…がリリースされる日であったのだ。
 尚、聞いている曲は、アントニン・ドヴォルザーク作曲の「Auf der neuen Welt新世界より」である。
 日本ではその第二楽章を元にした「遠き山に日が落ちて」等が有名であるが、今聞いてるのは第四楽章。冒頭部分を聞けば誰もが嗚呼と頷く所だ。
 夕暮れと言う時刻ならば第二楽章の方が俄然合っているが、まさに怒涛と言わんばかりの第四楽章を聞いているのは、己の心中の高まりが故か。

 そうして既に二桁に至るリピートを掛けながら、整理された道路を歩く事数十分。

 グズリッ

「お?」
 暁徒は脚を止めた。
 進み行く道の先に、見知った顔が二人居たからだ。
 雪の如き白銀の髪の少女と、和を思わせる眼鏡の女性。
 どちらも暁徒が所属する結社「Laboratory」の団員だ。
 彼女らは、困ったそうにきょろりきょろりと辺りを見渡している。
 と、白銀の少女の視線が、暁徒の視線にばちりと重なった
「あー、暁徒君っ。」
「どうしだい白玖蛍。こんな所でおたおたと。」
 ぱっと手を上げて応えた銀髪の少女、白玖蛍に応えながら、ヘッドフォンを取って暁徒が尋ねた。
「えっとね、うんとね、伊織ちゃんのぱん君が行方不明なんだよーっ。」
「ぱん君?」
 暁徒の胸元でわたわたと説明する蛍から出てきた名前につられて、彼はこちらの存在にも気付かぬ様子で辺りを見渡す眼鏡の女性、朝加伊織の方を見た。

 女性、と言ったが、伊織は暁徒と同い年、高校一年である。
 だが、どうにも少女と呼ぶには若干の抵抗があった。
 きっちりと前を分けながら結わえられた黒髪に、薄い楕円形の眼鏡、真新しく黒光する制服を崩す事無く着込んだその姿が、大人っぽく見えるからだろうか。
 或いは、常に落ち着いていて、ゆったりとした物腰がそう見えるからかもしれない。
 仲が良いと言う蛍と一緒にいると、その傾向は顕著である。尤も、蛍の精神年齢が周りから…本人は認めていないが…低いと評されている事も関係するかもしれないが。
 もし仮に、実は童顔の成人女性で、制服のコスプレをしてましたと言われても、暁徒は容易に

「あの塩森さん。今物凄く失礼な事想像しませんでしたか?」
「いやいや全く。物凄く失礼な事等想像しませんでしたよ?」
 視線に気付いたのだろう、訝しがげな様子で尋ねてきた伊織に、何食わぬ顔で暁徒は応えた。
「そうですか……。」
 腑に落ちないが無理矢理納得した、と言う感じで伊織は呟くと、同時にはぁと溜息。
 内心にしゃりと笑っていた暁徒も、その様子に顔を引き締め、
「あー、で。一体全体何があったんだい。」
「だからねっ、伊織ちゃんのぱん君が行方不明なんだようっ。」
 要領を得ない蛍は無視し、伊織の方を見た。
「はぁ……実はパンダのぬいぐるみを落としてしまいまして……。」

 聞けばこうだ。
 蛍と二人、楽しくお喋りしながら歩いていると、後ろから自転車が猛スピードで走ってきた。
 危ないっ、と咄嗟に蛍を小脇に手繰り寄せつつ自分も退いた事で、幸い事故には至らなかった。
 だがその拍子に胸ポケットに入れていたパンダのぬいぐるみを何処かに落としてしまったと言う。

 そう、経緯を語る伊織の藍色の瞳は薄らと水気を帯びていた。
 彼女は、自他共に認める無類のパンダ好きである。
 落としたと言うパンダのぬいぐるみを常に胸ポケットに入れていた事を暁徒は思い出した。

 こーゆー所は年相応なジョシコーセーだよなぁ、等と少しずれた事を考えながら、
「そりゃぁ大変だな。どれ、俺も探してやるか。」
 そう言って、暁徒も辺りを見渡し始めた。
「嗚呼、お願い、出来ます?」
 本当に心配そうに頼みながら、伊織も再び首と眼を動かす。
「うー、でも本当に何処行ったんだ……よう?」
 無視されて隅で不貞腐れてた蛍も、同じくきょろきょろ探し出し、そして途中で止まった。
 あれ?と小首を傾げながら、向けられた視線の先は、暁徒の脚の下の辺り。
 はい?と小首を傾けながら、伊織もまた視線の先を、彼の足元へと向ける。
 うん?と二人に合わせる様、暁徒も視線を下に向けて、

 ドンッ

 と、上に変えられた。強い衝撃を持ってして。
 腰から先に、後ろへと突き飛ばされたのである。
「つっ……何だよ一体っ!!??」
 ひりひりと痛む尻を擦りながら、睨む様にして伊織と蛍の方を見た暁徒。
 その紅い丸眼鏡ごしの黒眼に飛び込んだのは、
「ぱん君っ!!!!」
 ひし、とパンダのぬいぐるみを抱き締める伊織の姿であった。
 抱かれたぬいぐるみは土色の汚れを付けて、その毛並みも乱れている。
 汚れはまた、明らかに靴跡の形状をしていた。

「あー……。」
 先程立ち止った時に感じた奇妙な柔らかさの正体を知り、暁徒は目線を逸らして頬を掻いた。
「みゅー、暁徒君酷いんだよっ、鬼っ、悪魔、人でなしっ、責任取れーなんだようっ。」
「うっ、五月蝿い。周りが聞いたら大いに誤解する様な台詞を連呼するんじゃないっ。」
 ぴーちくぱーちく喚き立てる蛍に、きゃんきゃんばうばう吠え立てる暁徒。
 伊織はと言えば、二人の様子を笑みを浮かべて眺めながら、指に手を当てて、
「いいですよ蛍さん。暁徒さんも悪気があってした訳じゃありませんし。」
 ねー?と、手に持ったぱん君に微笑み掛けた。
 微笑み掛けられたぱん君は、こくりと頷いた。頷き過ぎた。

「「「あ。」」」

 嘘の様に呆気なく。
 まるで最初からそうだったかの様に転げ落ちたぱん君の首。
 
 ぽてん、ぽてん、ぽてん、ぽてり。

 3回程転がって止まった彼に、三人の視線が集中した。
 形容し難い沈黙が、辺りを覆って行く。

「っ……。」
 その幕を払い除けたのは、伊織だった。
 最早ぱん君としての自己存在理由を失った、綿と毛の塊を放り捨て、だっと走り出す。
「朝加伊織っ。」
「伊織ちゃん待ってっ。」
 咄嗟に暁徒と蛍が静止したのも聞かず、その姿はあっと言う間に見えなくなってしまった。
「あー……。」
 心底弱ったと言う様子で、暁徒は伊織が去って行った方を見た。
「暁徒君酷いんだよう、この殺パンダk、むぎゅぅ!!!!」
 それから飛び掛らんばかりの蛍を押さえつけながら、視線を下に向けた。
 首だけとなったぱん君の、その光無き瞳とその視線を重ね合わせながら。


――翌日


 まだ登り切らぬ朝日が差し込む学校の廊下を、伊織と蛍が歩いて行く。
 余り寝ていないのだろう、伊織の眼には薄らと隈が浮かび上がっていた。
「にゅーん……伊織ちゃん大丈夫だよう、蛍が新しいパンダ君を連れて来るんだからっ。」
「えぇ……でも、あのぱん君はこの世界に彼一人だけしかいないんです……。」
 蛍の必死な説得も上の空で、伊織の口から漏れるのはただただ溜息と悲嘆ばかり。

 風の噂によるならば、彼女の部屋にはパンダのぬいぐるみ…関係者の証言曰く、それはぬいぐるみに留まらないと言う話だが…が置かれた別室、通称愛のぱんだるーむがあると聞く。
 さらに、好きなタイプはと聞かれて、無意識にパンダの特徴を挙げる彼女である。
 その落胆ぶりは、察して余りあるものであった。

「はぁ……。」
「にゅ……。」
 これで何度目かの溜息を付く伊織に、普段騒がしい蛍も何を言ったら良いか解らない。
 そのまま廊下の角を曲がろうとして

 ボフンッ
「きゃっ……!!??」

 柔らかい何かが、伊織の顔にぶつかった。
 何事かと立ち止り、ずれた眼鏡の位置を直して見た伊織は、唖然として呟いた。

「ぱん君……。」
 それは紛れも無く、あの死んだ…彼女にとっては死んだ、だ…と思しきぱん君だった。
 その姿は昨日の無残な姿では無く、彼女が見慣れた何時もの姿だ。
 いや、よく見れば首は乱雑に糸で縫いつけられている。
 そしてその胴体は、無数の絆創膏を張られた右手によって支えられていた。
「暁徒君?」
 角に向かってひょっこりと顔を出した蛍が、右手の主を見て呟いた。
 塩森暁徒である。
 つっと彼は、蛍の視線から逃れる様に丸眼鏡を上げつつ、角から出て伊織に向かい合った。
「塩森さん?」
 訝しがる伊織。その視線からも逃れんと明後日の方を向きながら、暁徒はぐいっとぱん君を差し向けた。
「あー……それな。うちの姉貴に頼んだら直してくれたのさ……悪かったな。」
 明らかに嘘である。
 それは、裁縫の手際”悪さ”や、無数の絆創膏から容易に想像出来る事。
 きょとんとしていた伊織であったが直ぐに、
「はい、ありがとうございます塩森さん。その、お姉さんにもお礼を言っておいてくださいね?」

 ふわりと。

 穏やかな、見る者を和ませる様な笑みを浮かべ、ぱん君を手に取った。
 大事そうに両手でそっと、胸ポケットの定位置に収める。
 収まるべき場所に収まったぬいぐるみは、とても綺麗で可愛らしく見えた。
「あー……伝えておくよ。」
 紅い丸眼鏡ごしに、ぱん君が舞い戻ったのを見届けた暁徒は、素っ気無くそう応えた。
 サングラスを掛けていても、頬が染まっているのが見て取れる。
 何て解り易い。
 思いもかけず、伊織はくすくすと笑っていた。
「……何でそこで笑うんだよ。」
 むっとして睨む暁徒であったが、さらに赤くなった顔では全く迫力が無い。
「暁徒君、解り易いねぇ~。」
 傍らで眺めていた蛍も、一緒になって笑い出す始末。
「ですねぇ。」
「……けっ。」
 仲良く笑い合う二人に、舌打ち一つ発して、暁徒はくるりと背を向けた。
 ズカズカカツカツわざとらしく闊歩してゆく様を、くすくすと笑い合う伊織と蛍。
 表情無きぱん君も、暁徒が消えるまでその背中を眺めているのであった。





 後で、白玖蛍はこう述べている。
 
「暁徒君もパンダさんなんだよう。」
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