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2006.12.11 星灯
 水餃子鍋が美味かった(寒冬的挨拶)

 Guten Abend,王・今年は暖かいと言うが、それでもやはり冬は冬・里である。珈琲も美味し。

 さて今宵は、銀雨ことシルバーレインにて、秋咲氏の所の八澄彩乃嬢を借りて暁徒とのSS。何気無い日常と言うのを書いてみたかった、寒かったから。後はおっぱいが素晴らしいと脳内ジョルジュが囁いたから。

 尚ここでのやり取りは、ここでのやり取りを参照にした、と宣伝しておく。新顔大歓迎。
「寒ぃ。」
「だからボクは中入ろうって言ったんじゃないか。」

 澄み渡る空に輝く星々に照らされた銀誓館学園校舎屋上。
 かなりの高さを誇るここからは星だけで無く家々の灯も見えるが、人の気配は感じられない。
 今年は暖冬と言うが、それでも日照らぬ夜は季節通りに寒さが身に染みるものだ。
 外ならば尚更であろう。
 だと言うのに屋上に出て、震えている影が二つ。
 黒髪を前に数本残して後ろに撫で上げ、紅い丸眼鏡を鼻先に乗せたのは塩森暁徒。
 普段上から数個外している制服のボタンをきっちりと止め、体を丸めて座っている。
 口に咥えた、愛煙する『ブラックデビル』は赤い火がガチガチと震えて揺れていた。
 その隣に、同じく体を丸めて座っているのは一人の女子高生。
 漆黒の髪と瞳、白亜の肌に蜜桃の唇は麗しく、正しく日本人形の様。
 そしてすらりと細く伸びた体躯を包み込む制服の上でも、女性らしい発育を遂げた部位が良く見て取れた。
 彼女の名前は八澄彩乃。
 暁徒とは同い年であり、ふとした事で知り合った仲だ。

 以下ふとした事。

「お。」「あ。」
 校舎間を繋ぐ外廊下に設置された自販機で、交差した右腕と右腕。
 伸びた人差し指が指し示すのは、あったか~い缶珈琲のボタン。
 片方はブラックを、もう片方はカフェオレを。
 同時に腕を引っ込めながら、塩森暁徒と、八澄彩乃は、
「あー……あんたが先にどうぞ。」「……いや、そちらが先にどうぞ。」
 思春期の男女間に見られる特有の気まずさを感じながら、二人はやはり同時に譲り合った。
「……それじゃ俺が先に。」
「あぁ、うん、お構いなく。」
 普通なら行くまでも続きそうなこのやり取りは、暁徒の図々しさによって即決した。
 チャリチャリと硬貨を落とし込み、びしっと人差し指でボタンを叩く。
 間も無く、ガコンと下の取り出し口に、黒い背景に黒い菊が描かれた『KIKU』と言う缶珈琲が落ちた。
 そして廻り出す、おまけのもう一つが貰えるルーレット。
 小型の電子盤はピコピコと回転し、やがて中央の部分で停止、赤い光が灯った。
 当たりである。
 ほぅ、と息を吐いた暁徒は、隣にいる彩乃に向けてにっと笑うと、カフェオレのボタンを押した。

 以上ふとした事。

 その後珈琲の話で意気投合した二人は、互いに名乗り合い、今の交友に至ったのである。
 所で何故彼等は屋上にいるのだろうか。
 私立だからだろう、銀誓館は校則がかなり甘い。
 例えば服装。
 制服があるにはあるが、その着用は義務付けられておらず、何を着ても自由である。
 一説には校長の趣味と言う話があるが、定かでは無い。
 この様な風潮である為か、はたまた能力者としての規格外からか、校舎への出入りも容易である。
 能力者の個人的集団である『結社』でも、そんな所で良いのかと思う場所で活動していたりする。
 かく言う訳で、夜間であろうと出入りは可能であり、良く生徒達は空き教室で駄弁っているのである。
 その生徒達の一人である暁徒に八澄であったが、屋上を選んだのは彼の方だ。
 理由は『何か誰もいなさそうだから』
 確かに誰もいないだろう。中の方が、暖房器具が無くともいくらかマシなのだから。
 庭駆け回る犬を自称する暁徒も例外では無いのだが、彼には一度決めたらテコでも動かぬ頑固さがあった。

「寒ぃ……下手したら独逸よか寒いかもしれねぇ。」
「絶対にそんな事無いと思うんだけど。」
 紫煙と白煙を同時に吐きながら呻く暁徒に、少し呆れ顔の彩乃。
 大抵の男が振り返る様な美貌を持ちながら、一人称がボクと言う、実にボーイッシュな性格の持ち主である彼女は、やれやれと首を横に振るとポケットから何物かを取り出した。
 薄茶色をしたそれは、『KIKU』と銘打たれたカフェオレの缶珈琲である。
「はい。」
 と言って、暁徒の方へと差し出しす。
「偉い気前がいいな。ってか、持ってるなら早く出せよ。」
「何その言い草。後で飲もうと思ってたんだよ。」
 生来の口の悪さを発揮しながら、彼は珈琲を受け取った。
 別のポケットから、もう一つを彩乃は取り出す。
 殆ど同時に空けられた缶からは独特の芳香が漂い、鼻腔に満ちて行く。
 ごくりと喉に流し込まれる乳白色がかった琥珀色の液体は、舌の上に砂糖と牛乳の甘ったるさを残し、胃の腑へと落ちて行く。
「んむ、この取ってつけた甘味っ。まさに缶珈琲だな。」
「嫌なら飲まなくていいけど?」
「誰も嫌なんて言って無いぜ。」
 怪訝な顔をする彩乃が伸ばした手から隠れつつ、暁徒はごくりごくりと喉を振るわせた。
 ポケットに入る程度の大きさなので入っている量も知れたもの。
 彩乃が半分程飲んでいる間に、全ての量を飲み終えてしまった。
「ふぅ……んー、地味に暖かくなったな。ちと温かったが。」
「それはずっとポケットに入れてたから、仕方ないでしょ。」
「あんたが暖めてくれりゃ良かったのにな。胸とか胸とか胸とか胸とか。」
 ぐっ、と珈琲を喉を詰まらせ、彩乃は咳き込んだ。
「……行き成り何を言い出すんだキミは。」
「八澄彩乃と言えば胸、胸と言えば八澄彩乃と言うのは当然だろ、常識的に考えて。」
 真顔ながら、十本の指で独立した動きを見せる暁徒の言動はオヤジそのものである。
「何時のっ、何処のっ、誰の常識だっ。」
「夜の、銀誓館の、ここでの常s、往来、冗談だ。そいつを下ろしてくれ。」
 その指を停止させながら、冷や汗一つに苦笑いを浮かべて、暁徒は両の腕を上げた。
 首元には彩乃が差し向けた、長槍の詠唱兵器だろうか、竿竹が向けられていた。
「全くもう……ボクはこんなの要らないのにな。」
「見てる分にゃ素晴らしいと思うがね。」
「……カナ先輩も似た様な事言ってたよ。」
 二つの脂肪の塊を鬱陶しそうに持ちながらはぁと深い溜息を漏らした彩乃は、すっくと立ち上がった。
「帰るかい?」
「ん、流石にもう遅いしね。」
 そうだな、と携帯電話のモニタを見ながら、暁徒は頷く。
「キミは?」
「あー、もうちょっとここに居るさ。星が綺麗なんでね。」
「寒いって言ってた癖に……まぁいいけど。風邪引かない様にね。」
「応よ。珈琲ご馳走様さ。」
「いいって。それじゃね。」
 残っていた缶珈琲を飲み干して、苦笑しながら屋上を去って行く彩乃に、暁徒は缶を持った右手を降った。
 錆びた鉄製の扉が、ガタンと閉まる重い音が響き、カツンカツンと階段を降りて行く軽い音が響く。
 ふっと先程のやり取りを思い返しながら笑う暁徒だったが、ふいにその唇が真一文字に戻った。
 こっと缶を置いた彼は、懐からブラックデビルを取り出すと、手馴れた手つきで火をつけ、口元に咥える。
 ココナッツミルクの甘いフレーバーを持つ煙草を吸い込みながら、彼は首を上に向けた。
 紅いレンズと黒い瞳に映るのは、冬の代名詞とも言える、オリオンの星座。
 力を誇ったが為に神の嫉妬を受け、放たれた蠍の一撃で死を迎えた狩人である。
 ゾンビハンターとして、屍狩人と称し、魔王、野薔薇と呼ぶ武具を振るう自分。
 力を誇っているつもりは無い、が争乱の輪廻は何時か自分に廻って来る事は良く解っていた。
 その時になって輪廻の指輪を断てる為にか、或いは笑ってそれを迎えられる為にか。
 何でも無い日常を噛み締める様にずずっと黒い煙草を一瞬で灰にすると、彼は濃い煙を吐いた。
 冬の澄んだ空気が白煙で淀み、曇る視界の中、彼は残ったフィルターを空き缶の口に押し付けた。
 ぽたりと垂れていた灰が内に落ち、じゅっと言う音がかすかに聞こえる。
 そして最後に焔が消えると、辺りには天地の星々に包まれた静寂が訪れた。
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