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2007.01.01 酒宴
 さて、新年一発目だ。正直年越しても、今の所はそう大差無いがな。まぁ一応目標を上げるとすれば、2007年度は独逸語をしかと話せる様にする事と、一本長編を書く事であるな。

 所で、銀雨ことシルバーレインから年賀メールが来た。こう言う所は律儀であるな。しかしあの二人はカップルなのだろうか。個人的には、猫の人から頂いたポスターより、毒島の兄貴ぶっ殺し嬢ちゃんが脳内カップル&ヒーロー・ヒロインであるのだが。
 鐘の音が厳かに鳴り響く鎌倉の夜。
 晴れ渡る空には、年が開けても尚輝き変わらぬ星々が灯っている。
 地にもまた、普段より遥かに多くの星の光が見受けられた。
 新しい年の幕開けである。
 皆、愛しい者達と共に、この記念すべき時を過ごそうとしているのだろう。
美代ちゃんは寝ちゃいましたねぇ。」
 そしてここは郊外にあるとあるマンションの一室にある塩森宅、その居間。
 そこにはマットの上に赤と黒のチェックの布団が被さった炬燵が置かれている。
 正方形の炬燵に入っている人間は四人。
 一人は長女、和葉
 白のニットシャツに年季を感じる緑の半纏を纏っている。
 下は黒のロングスカートで、きっちりと正座して入ってるのが彼女らしい。
 その花の茎の様な白い指を伸ばす先は、次女美代の頭の上である。
「んんぅ~~。」
 赤い帽子を顔深く被った彼女は、座布団を枕にすっかり熟睡している。
 まだ中学一年の彼女に、この時間まで起きているのは辛かった様だ。
 和葉が優しく撫でても、ぴくりともしない。
「まー、こんな時間だしな。」
 美代の隣、和葉の反対で胡坐をかいてるのは暁徒である。
 何時もの紅い丸眼鏡はそのままに、風呂上りなのか、髪を下ろしている。
 服装は、これまた馴染みの色である紫にデフォルメされた黒い悪魔が描かれたトレーナーにジーンズ姿だ。
「そうそう。お子様はもう寝る時間ですよ。」
 そして、最後にもう一人。
「ってか、何でお前が居るんだよ、エリカ・ベルンシュタイン。」
「にゃはは、いいじゃないですか。昔馴染みで、和葉さんとは同級生ですよ?」
 緑のタートルネックセーターに赤と黒のチェックスカート。
 黒タイツを履いた脚を炬燵の中に無作法に伸ばすのは生まれも育ちも独逸のハーフだからか。
 ぶすっと指を指す暁徒を尻目に、エリカはねー?と和葉に同意を求めた。
「そうですよ暁徒ちゃん。エリカちゃんは留学生で、家に誰もいないんですから。お父さん達がお友達だった縁もありますし、ここは暖かく迎えてあげませんと。」
「流石和葉さんっ、話が解りますねっ。」
「あー、はいはい。勝手にやってくれ。」
 女同士、ひしと手を取り合う和葉とエリカに呆れた様子で、暁徒はくいとお猪口に告がれた熱燗を飲み干した。
 よく見れば、炬燵の上には幾つものとっくりと一人一つ(勿論美代のも)で計四つのお猪口が置かれている。
 下を見れば、空になった徳利が無造作に放置されていた。
 独逸の法律では既に15歳からビール等の軽いものに限り、呑んでも良い事になっている。
 ここは独逸では無い、と当然の突込みが入るだろうが、それを言うべき大人はこの場には誰もいない。
 どちらにしろ、祝いの時であれば、大目に見てもらいたいのが人情であろう。
「あー、しかし思い出しますわ。あっちじゃ、年越しと共に爆竹巻きましたよ爆竹。」
 きゅぅと熱燗を飲み干しながら、夢見心地にエリカは言った。
「あぁ、やりましたねぇ。パンパンパンパン。それはもう五月蝿い事五月蝿い事。」
 味わう様にゆっくりと熱燗を啜りながら、和葉が応える。
「やったな。あー、餓鬼の頃な。根性試しで爆竹の雨を駆け抜けさせられたもんだよ、うちの馬鹿親父に。」
「あらあら。幾つでしたっけ?暁徒ちゃん。」
「んー、四歳?か、五歳、だろ。小学校上がる前なのは確かだな、その頃こっち来てるし。」
「無茶な事させるお父様ですねぇ。」
「全くだぜ。」
 エリカの感嘆にしみじみと応えながら、暁徒は手酌でお猪口に熱燗を注ぐ。
 親指と人差し指で円を描く様にそれを持つと、まるで水でも飲む要領で口に運んだ。
 米で作られた日本酒独特の味わいと香りが口と鼻一杯に広がり、とろりと喉に落ちて行く。
 胃の腑に注がれると共に、体の芯からじんわりと暖かくなる。
 その感覚に思わず、くぅぅ、と言う渋い声が暁徒の口から毀れ出た。
「日本でそんな事は……出来ませんわよね。」
「やったら流石に怒られるから、駄目でしょうね。」
「あー、ここのマンションのよ。屋上でやるって手もあるな。」
「どうやってやるつもりですか、っと、ドウモドウモ。」
 空になったお猪口に、暁徒が熱燗を注ぐのを受けながら、エリカが尋ねる。
「地面でやるから駄目なんだろ?なら、簡単じゃないか。」
 ツツツと自分の分も注ぎながら、にやりと暁徒は笑った。
「どうするんですか?」
 和葉の疑問に、ぐっとお猪口を空にしながら、
「バ・レ・ッ・ト・レ・イ・ン。」
 一文字一文字にわざとらしくアクセントを置いて応えた暁徒の言葉に女性二人は、
「「あーあー。」」
 素直に納得していた。
「空に向かってよ、こう、ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガってな。」
「いいですねぇ。それじゃ私も炎の魔弾を、景気良くドカンと撃ち上げましょう。」
「流石姉貴だ。解ってるじゃないか。」
「いえいぇ、それ程でもありますよ。」
 姉弟は机の上に乗り出して、お互いの名案に乾杯を捧げた。
「あ、でもですよ?」
 ことり、とお猪口を置きながら、腕を組んでエリカが大袈裟に首を傾げた。
「撃ち上げられた弾って、そのまま消滅するんですかね?何か堕ちてきそうな……。」
 ぁ。
 酔っ払いの提案に水を差され、暁徒は閉口。和葉は眼を瞬かせる。
 軽い沈黙の後、くすっと笑ったエリカは、
「にゃっははははははははははは、馬鹿ですわねこの酔っ払いはーっ!!!!」
 暁徒の首を巻き込んで、むんずと己が胸に押し付けた。
「ちょっ、てめぇっ、充分酔って、ってか、胸っ、胸っ!!!!」
 顔を赤らめて、ばたばたともがく暁徒。
 しかし、がっちりと決まったチョークからは逃げられない。
「あらあら、楽しそうですねぇ~、暁徒ちゃん。」
 和葉は止めずに、傍から眺めている。
 お猪口を持つ手には力が入り、額に青筋が立っている様に見えるがきっと気の所為だ。
「姉貴も姉貴だっ、脂肪の有無に嫉妬してるんじゃねぇっ!!!!」
「誰が抉れた胸ですってっ!!??」「誰が太ってるとっ!!??」
「誰もんな事言ってねぇ、ぐふっ!!!!」
 笑いながら怒ると言う竹中某の如き芸風を見せる和葉に思わず突っ込むも、さらに腕の力を増したエリカの巨乳により、最早呼吸もままならぬ暁徒である。嗚呼羨ましいと誰もが思うが、本人にとっては生きるか死ぬかの瀬戸際であった。
 と、ふいにその拘束が緩んだ。
「お?」
 だらりと力無く下がった腕を退けながら、暁徒はエリカの顔を覗き込んだ。
「ふにゃぁ……。」
「あらあら、寝ちゃいましたか。」
 結構な量の酒を飲んでいて、さらに暴れたからであろう。 
 炬燵の上に上半身を置きながら、彼女はすぅすぅと寝息を立てていた。
「うわー、凄ぇ人騒がせ……ぅ、やべ、俺も。」
 ふぅ、と安心したのも束の間。
 暁徒も額を右手で抑えながら、眠そうに頭を横に振るった。
「あらら。こんな所で寝ちゃうと風邪引いちゃいますよ?」
「んー……構わねぇ。後、よろしく……。」
「うぐぅ……。」
 和葉の心配そうな声を他所に、エリカの上に折り重なる様にして暁徒は突っ伏した。
「全くもう……自己管理出来ないのにそんなに呑むからですよ。」
 半ば呆れた調子で、しかし柔らかな微笑みを浮かべながら、和葉は立ち上がった。
 風邪を引かぬ様、毛布を盛って来ようと、寝室に向かおうとする。
「……あー……そうだ……言い忘れてた。」
 それを、暁徒のふにゃふにゃとした声が止めた。
「はい?」
 小首を傾げて振り向く和葉に、暁徒は片手を振りながら、こう言った。
「あけまして、おめでとう……さ。」
 がくん。
 言い終えた瞬間に、彼の手は力無く炬燵の上に倒れた。
 次の瞬間、ぐぅぐぅと言う寝息が、伏せられた口から発せられる。
 あらあら、と少し驚いた様な顔をした和葉は微笑んで、
「はい、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。」
 そう言いながら、すっと居間を後にしていった。

 翌朝。
 まだ日昇らぬ時刻。
「んー……あー、お早う兄さん。エリカさん……どうしたの、二人して。」
 炬燵からむくりと起き上がった美代は、目の前で頭を抱える二人を見て首を傾げた。
「いーまはちょっとはなさないでいてもらえるとおねえさんはうれしいですわぁ。」
「あー、み、美代はさっさと寝ちまったからな。うん、この辛さは解らんのさ。」
「ふーん。大変だね。」
 何があったか、理解出来なかったが、美代はそう応える事にした。
 そんな暁徒とエリカの前には、砂糖もミルクも入ってない珈琲が注がれたカップが置いてある。
「♪~~~」
 既に起きて早々とおせち料理の準備を始めている、和葉が入れたものである。
 うぅと呻きながらも何とかそれを啜りつつ、二人は顔を見合わせて言った。
「なぁ……ペースは、兎も角よ。呑んでる量だったら、俺等と変わらん、よな?」
「いやぁー、なにげにもっとのんでたきがしますわよ?……いつぅ。」
「それじゃーよ、何であんな元気に、動き回ってるんだ?」
「し、しりませんわよ~、せかいけっかいのしょいじゃありませんこと?」
 くるりと首だけを台所兼居間に向けて、二人は和葉を見た。
 とんとんとお雑煮用の野菜を包丁で切る彼女の姿は健康そのものであり。
 新年一発目の怪奇と二日酔いに頭を痛めながら二人は
「あ、俺まだ駄目。もう一回寝る。」
「ぁー、わたしもそうしますわぁ。」
 くたぁと、仲良く揃って炬燵に突っ伏し直した。
「……何やってるんだか。」
「ぐぅー。」「うぅ~。」
 そう呆れた風な美代の声が届く間も無く、二人の意識は淡い闇の中へと呑まれて行った。
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