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 ドラキュラ三部作(続編は多分無いだろう)の二作目が舞台は、第一次世界大戦末期である。
 前作『ドラキュラ紀元』の舞台となった霧の都・倫敦とは雰囲気が全く違っているが、虚実ごちゃ混ぜの多数の登場人物達は今作でも健在であり、偽史として真に楽しませてくれる。ハーバート・ウェスト、ちょび髭の伍長閣下(まだ本当の意味での伍長)、エドガー・ポォに、個人的には嬉しいフランツ・カフカ(生前は評価されないんだよな、この人)。時代が時代なだけに怪人奇人は成りを潜め(チャーチルやゲーリングは描写的にはかなりそれに近いけれど)主に軍関連の人達が多く出て来る。戦争作品を知っている人程楽しめそうだ。

 だが今作の最大の見所は、やはり『戦記』の名前の通り、架空戦記としての戦闘シーンであり、その中核を担うのが『赤い男爵』マンフレート・フォン・リヒトホーフェンだ。今作の主人公では無いが、その主人公を完全に喰って間違い無く主演を張る人物で、ストイックな戦闘狂である。

 前作において英国王室を追われたドラキュラは、独逸皇帝に歩み寄り、軍事を掌握するのだが、そんな彼がリヒトホーフェンら独逸空軍のエースを独領仏蘭西の古城に徴集した。その地にて、既に一線を退いたチャールズ・ボウルガートの代わりに若き諜報員エドウィン・ウィンスロップが目撃したもの。

 ……それが何であるかはあえて伏せさせて頂くとして、その設定がまた宜しい。多分誰もが考えそうな、しかし実際にやった人間がどれ程いるのか解らないそれが夜空を駆け回り、連合軍の戦闘機乗り(彼等もリヒトホーフェンら同様、諸作品から集まったエース達だ)と壮絶な空中戦を行うのは実に爽快である。既に吸血鬼の兵士達が跋扈する世界だからこそ出来る芸当とも言えようか。

 特にクライマックス、紆余曲折の果てに撃墜王として、半鬼半人として生まれ変わったウィンスロップが、宿敵リヒトホーフェンと最後の戦いを繰り広げる場面は圧巻であり、これだけでも読む価値がある。

 また彼等の、そしてもう一人の主人公たる吸血鬼の女記者ケイト・リードの存在のありようは、そのまま戦争に巻き込まれた世界の縮図の様に描かれている。前作が愛の物語とするならば、今作は戦、とりわけ男の、物語だ。誰も彼もが、近代的戦争の渦中に巻き込まれ、吸血鬼の赤い渇きにも似た衝動に苛まれ突き進んで行く。ウィンスロップは己が血の熱情のままに敵を撃ち、リヒトホーフェンは冷徹な魂を戦場の中で燃え滾らせ、ケイトは女性として記者として戦争を眺め、己が役割を行う。他の登場人物達もまた同様である。こう言った話はありがちと言えばありがちとは言え、展開のさせ方が上手く、実に惹かれるものがある。

 この様に、今作は前作とかなり毛色が違う為、戸惑う面があるだろうが、名作であるのは間違い無い。

 ただ唯一納得いかない事を言えば、

 ジュヌヴィエーヴの出番が無かった事である。

 確かに影響力は凄い。チャールズに「わたしが知っている最高の女性はヴァンパイアだった。最低の男もだがな。」と言わしめ、事ある毎に存在感を出しているが、それだけでは納得行きかねる。実質的な出番が近況報告数行では余りに寂し過ぎる。自分は、チャールズ・ボウルガードと彼女との、微笑ましくも切なく、冗句と諧謔に溢れ、はいはいノロケノロケな愛に満ちた遣り取りが見たいのだ。まぁ戦争真っ盛りの欧州に留めて置きたくなかった、何時か来る別れの為に余り干渉したくはなかったのかもしれないがな。それ以上に、彼女を直接出したら他のキャラを悉く食いまくるので、致し方無いのだろうけれど。

 その分崩御ではしっかりヒロイン兼主人公に返り咲いているので良しとするか。そちらについてはまた別項にて。
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