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 さて前章では詠霧趣(イギリス)及び阿真利火(アメリカ)において顕著に現れた保因者がどの様な形で広まっていったかを語ったが、この章では更に発展させ、保因者がもたらした社会的変化を、特にそれが大きかった詠国から取り上げたい。
 まず、何よりも目立って起こったのが、犯罪率の急上昇である。見た目は人間でもその能力は人間を遥かに超える存在である保因者は半ば意図的に、半ば暴走する形で法律と道徳を犯した。結果として治安は乱れ、ただでさえ酷いスラムは、とてもでは無いが一般人が入り込めない状況にまで陥った。
 これにより詠国王室と議会は国内の治安確保の為の組織、つまりは警察の抜本的見直しを行う必要に迫られ、またそれは急務となった。
 だがそれよりも大きな変化がある。私立探偵と言う職業の誕生だ。
 既に詠国内は、警察組織だけでどうにか出来るレベルでは無かった。保因者は貧民層においてかつての黒死病の如く蔓延し、そこに更に犯罪者達を纏める存在、『犯罪界のナポレオン』と称される男、最悪の詠国人が一人に数えられるジェームズ・モリアーティ教授が現れた事で一日の犯罪件数は窃盗等の軽いものも入れれば、同日の事故件数を易々と越える数字にまで跳ね上がった。
 そこで政府はたとえ警察組織に属していなくとも、優秀な頭脳とその筋への深い知識を持つ者に対し、広く協力を求めた。これが私立探偵の社会的始まりである。特に詠国、いや世界中で最も有名な探偵もこの頃にその活動が本格的となる。
 そう、シャーロック・ホームズだ。
 彼の存在は大きい。彼が数々の難事件を解決していった事で犯罪率は激減。論曇の治安を(本人は退屈していた様だが)保因者出現以前、教授出現以前にまで押し戻したのである。また彼のそのスタイルは私立探偵の原型として強く記憶され、後々現れる多くの探偵達に強い影響を与える事になる。そうした探偵達が、ホームズ亡き後も、警察と供に詠国の治安の為に無ければならない存在へとなっていったのである。

明眸書房 ヤンミッヒ・デンケ著 
『変容する醒紀 ―醜くも美しき旧時代―』(1987)



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