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 ウォーハンマー三部作第三巻にして最終巻は『ベルベットビースト』である。

 やはりネタバレがあるのでご注意を。
 今作は時間軸としては、ドラッケンフェルズ二巻第一部・流血劇の間に入る話である。また、これまでの二作品と違い、吸血鬼ジュヌヴィエーヴことジュネの出番は殆ど無い。皆無では無いが、主役では無い。それでも流石の存在感を醸し出しているが。

 その代わりに主役として動くのが、説明するだけで魂を滾らせる以下の者達である。

 ドラッケンフェルズにも登場し、僅かな出番ながらも味のある行動を見せてくれた公正明大な選帝侯ヨハン・フォン・メクレンベルク男爵。己の正義の為ならば汚れ仕事でも平気でこなす、マグニン投げナイフの使い手”ダーティ”・ハラルド・クラインダインスト。若い故に穢れを知らぬ、純粋な心を持った巡邏警備兵ヘルムート・エルゼッサー。その能力が災いして、幼い頃から魔女と呼ばれ蔑まれてきた今作の実質的ヒロインたる赤毛の心霊鑑定者ロザンナ・オフュールス。

 彼等の他、幾多の魅力溢れる者達が帝都アルトドルフの霧の中を舞台に、娼婦ばかりを惨殺する連続殺人鬼・獣(ビースト)の正体を暴かんと疾駆し、或いは国家転覆への暴動に利用すべく暗躍する。

 それが例の如く、実に手堅い文章による群像劇として描かれており、大変面白かった。獣の犯行を見れば解る通り、今作は切り裂きジャックをモチーフにしているのだが、また上手く調理したものだ。

 話としてはこれが本当にファンタジー系TRPGの世界観を元にしているのかと疑いたくなる倫敦の如き雰囲気の作品だが、そういったものが好きな者には実にたまらない内容である。もしくはドラキュラ紀元が好きな者としては。そして自分はその様な作品が大好きであり、霧の中を縦横無尽に駆け抜ける登場人物達とその物語には心引き寄せられた。

 中でもお気に入りは、ロザンナと、禍(まが)つ神々の一人・天津天帝(ティーンチ神)に遣えるキャセイ(あの世界で言う中国か)からの使者、に成り済ました密偵チン・ディエンである。

 男達の歪んだ欲望や殺人鬼のおぞましい殺意、哀れな被害者の最期をその能力で解ってしまい、身悶えするロザンナ(何故か炉山奈と変換された)にはなかなか来るものがあった。そんな彼女が獣の正体を暴き出すクライマックスから、ヨハンとのロマンスを匂わせる所で終わるラストもなかなか良かったな。特に唇と唇の触れ合いで意思と思考の遣り取りを行うシーンは、くはーっとなったものだ。くはーって。

 で、ディエン。敵役である彼は、ジャック・ヨーヴィル=キム・ニューマン先生のボンクラっぷりが良く解る素敵キャラである。その言葉遣い以外は実に典型的な怪しい中国人である彼は、獣やそれに伴う扇動家エフィモヴィッチらの暴動とは一歩引いた所で密かに、だが確実に暗躍する。そんな怪しさたっぷりの行動も素敵なのだが、何が素晴らしいって、こいつが知略策略だけでは無く、体術にも長けた武道家であるという設定だ。それもただのカンフー使いでは無い。鶴の舞いから酔拳、睡拳(正直に言えば、こんな拳法がある事を始めて知った。映画が元らしいが、今の若い者=HJ文庫Gを読む様な人間でどれだけ知っている者がいるだろう。少なくとも知人は知らなかった。)までこなす芸達者ぷりである。登場が(今の所)これだけというのが実に惜しまれる。もうあれだ先生、ドラキュラ~第四弾に出しちゃえよ。

 かような風に実に理の心を奮わせた今作とその登場人物だが、悔やまれる点は挿入されたミステリー要素が若干弱い所だな。ミステリーというよりもストーリー、世界を愉しむ作品である為別に弱くてもいいのだが、それにしても少しお座成りな感が。もう少ししっかり書いた方が良かった気がするな。獣の正体なんかは面白かったのだがな。

 まぁそれでも実に素晴らしい作品であった。ウォーハンマー三部作としては、これが一番面白かったな。紀元といい、こう言った雰囲気のものを書くのは本当に得意だな先生は(実際紀元はこの作品の直ぐ後に書かれており、ベルベットビーストを書きながら構想が練られていたのだろう)。

 この様な所で、三部作の感想を終わる。どれもこれも少々の不満はあるが、それを補って余りある素晴らしい作品だった。願わくば、これで先生とジュネの名が日本でももっと知られ、ドラキュラ三部作が再版されて、未翻訳のウォーハンマー作品(ダーティ・ハラルドとジュネがコンビを組んで、劇中未解決に終わった戦鷹殺人に挑む話を含んだ短編集らしい)も出る事を。
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