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 映画の記事が最近とみに多い事は自他共に認める所であり、仮にもこれは物書きとして如何なものかと、本の方で一つ書いてみたいと思う。という訳で、今回はサイバーパンクの名作『ニューロマンサー』の感想をば。
 マトリックスに影響を与えた攻殻機動隊に更なる影響を与え、サイバーパンクというジャンルを定着させた、ある意味では古典的作品と言っても過言では無かろう今作。前から読みたいと思っていたのだが、地元の本屋、図書館には置いておらず密林で発注する事に。こんな時、田舎の都市は不便である。

 さて、そんな今作。先日二回目を読み終えたのだが、実に面白い作品だった。

 ネットと意識を直接繋いだり、他人の感覚と同調したりする機構、自我を持つAI、周囲の風景と同化する衣装=光学迷彩、強化人間(印象的には、義体使い)等という設定には、流石に目新しさを感じる事は出来なかったし、今読むとその描写には多少の垢抜けなさ、古臭さを感じてしまう訳だが、それでも流石は先駆という所。それらが巧みに描かれている。

 そして、そのガジェットを盛り込み、描き出される世界の描写が実に魅力的なのだ。ブレードランナー的(時期は同じなので、どちらがパクったという事も無い様だ)退廃に包まれた亜細亜都市、千葉シティ。電子化の最前線を行く様な印象を与える『スプロール』。何世紀も変わらぬ埃っぽさ、きな臭さに包まれたトルコの都。重力から解き放たれて浮かぶ、造られたパラダイス『自由界』。移り変わるそれらの場所が、光景としてまざまざと脳裏にイメージされ、主人公達と共にちょっとした海外旅行をしている様な気分であった。次は何処に行くのかと、見知らぬ世界に期待しながら頁を捲ったものだ。キム・ニューマン師匠のドラキュラ三部作(特に紀元)もそうだったが、世界を感じられる作品は実に良い。心が躍る。

 ただ、本筋の展開はかなり遅く、そちらに乗り込むには少々時間が掛かった。専門用語を多用し、且つ独特の言い回しを含んだ文章(それこそが正にサイバーパンクという雰囲気そのものであり、悪くは無いのだが、正直少し付いて行けない所も。慣れてしまった二回目は、すんなりと読み進められたのだが。)の所為もあるだろうが、主人公であるケイスが、当初より明確な目的を持っておらず、周囲に半ば無理矢理動かされていた事が大きな理由である。

 そんな物語が大きく動くのが終盤であり、ニューロマンサーというタイトルの意味が知らされる時である。冬の寒さの様な哀愁を乗り越え、ただ流されるがままであったケイスが、己が魂のままにネット空間を一気に駆け巡り行くラストは、それまでが長かっただけに、実に感慨深いものであった。その後の、夏の午後の様な爽やかで、何処か寂しげなオチもまた宜しい。

 という訳で、『ニューロマンサー』。良い作品だった。続編も出ている様なので、そちらもまた手に入れて読むとしよう。後、作者のウィリアム・ギブスンの共著で凄い気になっている『ディファレンス・エンジン』。理の趣味趣向にびしばし来るものがあり、金の入り次第入手したいものである。
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