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 →第三章
 それでその日はお開きとなり、ロリーナもハーバートと夜を共にする事無く朝がやって来た。叔父の言葉に気分を悪しくされた彼女だったが、一晩眠って目が覚めてみれば、そこには一角獣という未知なる生物に対する好奇心だけが残っており、清々しい朝日に照らされたその顔は健やかなものであった。
 そうしてロリーナは父、母、叔父と共に、一角獣を見たという森へと向かう。動き易いズボンとブーツの狩猟服に赤いストールを掛け、枝避けの鉈を右手で振りながら進む姿は軽快そのものだ。歩くのが早い為に、何度も止まる様大人達に言われるが、勿論そんな事など一向に聞こうとしない。ここに来て以来ずっと感じていた退屈を活動によって癒す様に、やがて昨日父が話していた森へと辿り付くもその足取りが代わる事は、一向に無かった。
「全く、そんなに見てみたいのかい、一角獣とやらが。」
 両親が遅い為に、放って先へ行くロリーナの背後から、見兼ねたハーバートがそう語りかける。追い駆ける彼の足取りも、彼女に合わせて早くなっていた。
「えぇ、勿論。論曇(ロンドン)じゃ、絶対に見れないものだからね。
 でもきっと、論曇(ロンドン)以外でもなかなか見れなさそうだけれど。」
 彼女はそう応えつつ、叔父が来るのを待たずに枝葉を薙ぎながら、緑深まる奥へと向かって行く。葉のカーテンを通して見える夏の空と、降り注ぐ光のシャワーもまた、超蒸機関が猛り狂い、幾千幾万もの人々が住む世界大都(メトロポリス)においては物珍しいものであるだろうが、ロリーナは気にも止めずに前に前にと向かい、
「あら……叔父さん?」
 ふと振り向いた時には、彼女の後ろで歩いていた筈のハーバートの姿は見えなくなっていた。実は随分と前に彼を置いて来てしまっていたのだが、ロリーナはさもそれが叔父の所為だと言わんばかりに小さな溜息を付く。
 そして独りだけとなった森の中で、彼女はそっと周囲を伺った。
 どうやら、気付かぬ間に相当遠くにまで来てしまっていたらしい。
相応な樹齢を誇ると推測される木々が天へと伸びるその地面は、長い間に降り積もった深い落葉に覆われており、ここが人類未踏である事を、それがおおげさな表現だとしても人の出入りに乏しい地である事を告げる。鳥の囀りも、風の過ぎ行く音も何処か遠く、その様な事は無いと解っていても、妖精達が住まう異界に迷い込んでしまったのではと錯覚させる。漸く自身の配慮が足りなかった事を悟ったロリーナは、戻る事が出来るかとその帰路を心配し始めた。
 その傍らの林が僅かに蠢いたのは、その時だった。
 はっとして彼女は身構えると、音のした方向へと青い瞳を向ける。視線の先にある小さな緑の茂みは、風の吹かぬ中で断続的に揺れ続けて何物かが潜んでいる事を示し、ロリーナはそれが現れる時を今か今かと待ち構える。
 暫くの時が経っても変化は無かった。
 何だ気のせいか、と視線を戻したその瞬間に、それはひょっこり顔を出した。
 茂みの中から顔を出したのは、それは間違い無く一角獣だった。
 その名前に相応しい特徴的な一本角の生えた頭をロリーナの方に向け、円らな黒い瞳でじっと彼女を見つめている。更に一歩、二歩と近付いて来た事で露となった体は、彼女が父の話の中で想像していたよりもずっと小さく、数値的には同じ位に見え、またポニーに近かった。
 幻想の中の生物が、今現実として自分の直ぐ目の前に存在している。
 その事実に直面し、ロリーナの心は昂ぶり、興奮で体を奮わせた。
 一角獣も彼女を気に入ったのか、その良い方面における伝承通り、無防備に近付くと、鼻頭を擦り付け出す。
 どうやら私は、この子が思う『清らかな心の処女』の条件に合致した様ね。
 皮革製のズボン越しに、白い肌から発せられる暖かさと、僅かな鼻息のくすぐったさを感じながら、ロリーナはすっと微笑んだ。ハーバート叔父さんが懸念していた事は、唯の心配過ぎであったという言う訳だ。
 彼女が喜んでいるその気配を感じ取ったのだろう。
 一角獣が、その角で傷付けぬ様注意しながら、首を挙げた。男装の少女を映し出す鏡となった黒い瞳は、まるで年上の女性に恋する少年のそれだ。
 熱烈なその視線にロリーナは思わずぞくりと震え、何処か上ずった面持ちで見つめ返す。そして彼女は震える左手を伸ばすと、若草の如く茂る鬣をそっと触り、ゆっくりと撫ぜた――

 娘を心配する父と母、そしてハーバートの元に、ロリーナが戻って来たのは、日も暮れ始めた頃合だった。
 来た時とは違い、鉈をストールに包んで抱え、土で服や顔を汚した姿に両親は酷く狼狽し、怪我は無いか何があったのかと問い詰めた挙句、独りにさせた叔父の責任を声高く上げるも、当の本人は至って健康そのもので、
「大丈夫、ちょっと木の根に転んじゃった拍子に、服が枝に引っ掛かっちゃっただけだから。それよりも、ねぇ、聞いてよ。私、さっき一角獣に出逢ったわ。うぅん、出逢っただけじゃない。実際にこの手で触ったんだから。」
 そう明朗快活に今日の出来事を語って見せた。
 母は娘のその言葉に疑いの眼差しを向け、父は自分の正しさに喜びを見せるが、両者共に、ロリーナが「それよりも」と切って捨てた事の方に関心を寄せると、再度その詳細を求めて口々に質問し出した。なので彼女は、何度も何度も、大丈夫大丈夫大丈夫だからと肩を竦めなければならなかった。
 だが、その様に鬱陶しい行為を受けても尚、ロリーナの機嫌は上々だった。
 帰り道ではハミングまでしてみせる始末。
 堪りかねたハーバートは、そっと尋ねてみた。
「ねぇ君。さっきの事は本当なのかい?
 一角獣と出逢って触った、っていうのは?」
 叔父の言葉に姪は、ふふんと鼻で笑うと、彼の体にしがみ付きつつ、
「ええそうよ。父さんや母さんや、貴方が心配する様な事は何も無かったわ。
 それ所か、ずっと心配していた事だってこれで解決したのよ。」
「それは、一体どういう事だい?」
「内緒。でも直ぐに解るわ。」
 愉しそうにそう応え、ハーバートを大いに困惑させた。

 夜になってもロリーナは上機嫌なままで、またそれはベッドの上でも変わらなかった。性別と体格と年齢と経験が故に基本的に受身になりがちな彼女は今宵、何時に無く、かつて無く積極的だった。
 皆が寝静まりかえった深夜。ハーバートの部屋でロリーナは、自ら窮屈な狩猟服を脱ぎ捨て下着の一枚も纏わぬ完全な裸体となると、まだシャツもズボンも着たままの彼を押し倒し、上に跨って何度も接吻をした。混乱気味の叔父等全く意に介さぬ激しさで唇を奪う姪は、まるで追い剥ぎか何かの様に強引な手付きでパートナーの服を脱がして行く。やがて互いに何も隠すものが無い姿になってもロリーナの勢いは止まらず、手と肌で程良く鍛え上げられた男の体や茶に近い金髪に触れながら、蛭の様に舌へ舌を絡ませ、滾る唾液を啜り、啜らせる。
 ハーバートは、年端も行かない女の子に半ば良い様にされ、また普段との違いに当惑するが、それを良い変化と前向きに受け止めると、少女の愛撫に負けぬ様な手付きでその若い体を堪能して行く。
 全身全霊を持って攻め、そして攻められ、ロリーナの体は燃え出さんばかりに火照り、抑えている割には大きい泣き声を上げた。
 そうして一度軽い高みへと達した彼女は、少し呼吸を整える程度に休んだ後、次の行為へと進もうとする。
 普段であれば後ろの穴を用いた偽りの行為。
 だがしかし、今回は、それすら違っていた。ロリーナは、犬の様にお尻を向けて這い蹲る何時もの姿勢では無く、その逆に、ハーバートに対して正面を向き、脚を広げた姿勢を取って見せる。それから自らの指を使って、潤いを称えている割れ目を、未だ男の象徴を受け入れた事の無い処女の証を、中までくっきり見通せる様広げると、赤らんだ微笑みを浮かべながらに言った。
「叔父さん。今日はこっちでやって、ね?」
「おいおい、それは不味いよ。
 僕は君を傷物にしたく無いし、何かあったらどうするつもりだい?」
 彼女の言葉へは、流石のハーバートも即座に頷く事は出来なかった。
 だがロリーナは、躊躇する彼に向けてうっそりとした青い視線を送ると、
「傷物なんて何を今更。こっちの穴でしてない、ってだけじゃないの。
 それに、今回は絶対に大丈夫。だから安心して好きな風に入れていいのよ……ハーバート。」
 背中を曲げてそそり立った一物へねっとりと手を伸ばし、自らの秘所にそっと誘う。拒んでいたハーバートだったが、その艶かしい手付きと、魅惑的な誘い文句には適わなかった。君がそう言うのなら、とさり気なく責任を移し変えつつ、体を重ね、腰を前へと押し込む。互いに汁気を帯びたロリーナ自身とハーバート自身が触れ合い、滑った水音を立てた。その感触に息を荒げる彼女は、ぺろりと舌なめずりをしながら間近に迫った彼の耳元で、こう囁く。
 来て、と。
 その瞬間ハーバートは、本当の意味で叔父から唯の一人の男へと変貌した。
 音を立てて豪快に理性が崩壊して行く中で、本能が発する欲望に従い、彼はロリーナへ、姪から唯の一人の少女へ、正に肉の棒と言うべき己自身を突き立てる。指とも舌とも違う太く激しい衝撃、そして今まで純潔を守っていた肉の壁を突き通された苦痛に、ロリーナは思わず甲高い悲鳴を上げ、破瓜の血がつぅと垂れて行く。だが、それも最初だけだ。あくまでもその部位だけが例外であって、彼女の体は既に男を知っている……知り尽くしていると言ってもいい。愛液を受けて滑り良く肉棒が出入りし始めれば、ロリーナは忽ちに順応し、快楽を求めて襞を蠢かす。その反応にハーバートは歓喜の声を上げながらも呼気鋭く腰を振り乱し、少女もまたそれを受け止める。
 そうして二人が初めて行った真っ当な性交は、あっという間に執着へと至った。
 熟練の女性が持つ潤いに処女の狭さを持つ膣の刺激を味わうハーバートは、己の限界を察し、ずっと腰を引く。その行為をロリーナがぎゅっと抱きつく事で止めさせると、彼女は激しく首を横に振って彼の行為を拒否した。
 それだけは不味いっ、と男は言おうとしたが、蠱惑的な少女の瞳の前で、自分を抑える事は出来なかった。
 ハーバートはその腰を、ロリーナの股へと密着させるとそのままに、性への昂りを彼女の中へと放った。通常の倍近い量を持って出された精液は、同じく絶頂へと至る処女の子宮を充分に満たし、僅かにその腹を膨らませる。
 自身の内側で広がって行く炎の様な熱さに、ロリーナは感歎の溜息を漏らして、その余韻に浸った。
「大丈夫、だった?痛みは?」
 性欲を充実させ、知性の糸をより戻したハーバートは、胸の下で放心している彼女に心配そうに尋ねた。ロリーナは、冷め止まぬ興奮に火照った顔に笑みを浮かべると、ぐっと首を縦に振って見せる。
「全然、平気……とっても気持ち良かったわ。まだ、足りない位――」
 そう言うと彼女はがばりと身を翻した。すっかり油断していたハーバートは、うおっと声を上げながら、ロリーナの下に移される。位置を逆にし、彼の上に跨りながら、彼女はにんまりと笑みを浮かべて言った。
「ね、もう一回しましょ……違うわ、一回だけじゃない。もっともっと、夜が更けるまでっ。」
「それは構わないが……少し、休ませてくれよ。
 僕は出したばっかりで、とてもじゃないが、」
 苦笑いを浮かべながらハーバートはそう返答しようとした。だがロリーナは、返事を待たずにその胸板へ手を置くと、勢い良く自ら腰を振り始める。大抵は一回、多くても二回で疲れ果てて寝てしまう十三歳の……それもついさっき、紛いなりにも初夜を終えたばかりの……少女とは思えぬ行動に、彼は目を白黒させながらも、その心地良さに一度果てて萎えていた一物を半ば無理矢理に滾らせ、快楽を味わい出した。再びそそり立てられた硬い棒の刺激に、ロリーナもまた歓声を上げながら、凄まじい勢いで腰を振り乱して行く。

 彼女は今、これまで生きてきた中で始めて心の底から満たされていた。
 自身が一体何を望んでいたのかを悟り、その願いがままに動いているのだから。
 二回目の絶頂を迎えても尚止まる事を知らぬ交わりに、下にいるハーバートは苦しい笑みを浮かべながら、待ってくれと言う、いや乞う。だがロリーナは、見事な三日月形に唇を吊り上げると、逆にその腰の動きを早めた。
 その彼女の脳裏に恥らうアデル・ボールドウィンと、泣きそうな宿の女中の姿が過ぎる。更にその二人に、丹精な面立ちを疲労と混乱で歪めたハーバートの姿が重なって、ロリーナはますます笑みを強めた。
 これこれよっ、これなのよっ。私が求めていたのは、正にこういう事なのよっ。
 頭部を覆う金色の巻き毛を、両手でくしゃりと握り締め、彼女は嗚呼と多大な愉悦の篭る吐息を発した。
 ロリーナの、その魂が望む究極の願い。
 それは人間としての、生物としての精神的優位だった。
 相対する者の弱さに付け込み、その心を完膚無きままに陵辱する事は、肉体的に遥かに優れている雄、男達を性的魅力で屈服させる事は、即ち自分が彼等よりも上に座している事を知らしめるものである。
 静寂に包まれたあの森の中で、無垢なる獣を我知らずに握り締めた鉈でくびり殺し、堪え難い魅力によってその神聖なる血を啜り舐めた事により、ロリーナはそんな、後世の者達がサディストと呼ぶ本来の己を自覚した。
 同時にその血は、彼女の心だけでなく、肉体をも変貌させていた。比喩表現として、しばしば品性無く使用される『下の口』は、語彙通りのものになっていた。交われば交わる程に相手の精力を奪い取り、ロリーナは強く、逞しくなって行く。ハーバートの顔が老い出して見えるのは、決して疲労の所為だけではあるまい。
 嗚呼きっとこの人に私が惚れたのは、これがしたかったからなのね。
 自信に満ちた態度、ハンサムな顔立ち、肉感的な体格。それを、ロリーナ・ドジソンという少女の力によって圧倒してみたい、捻じ伏せてみたい。無意識にそう感じたが故に、彼女は年上の叔父に惹かれたのだろう。
 その逆に、長い間ロリーナの方が導かれてきたが、今は違った。
 導くのはハーバートじゃないわ、この私、この私よっ。
 最早息も絶え絶えな彼の上で。
 騎士が馬に乗る様な姿勢のまま快感を得る、奪い続ける彼女は、そっと耳元で囁く。
「貴方にも困ったものね、こんなに早くばてちゃうだなんて。
 そんなに辛抱出来ないのかしら?……悪い子ね。」
 その言葉に応える力すら、ハーバートには残されていなかった。
 このまま交わり続けたらこの人老いて衰弱して死んじゃうかしら。
 そうロリーナは思った。
 だが、それもまた良いかと思い直す。自らの中で老衰する様を見たかったし、彼が居なくなっても、跪かせる者、誘い込む男など腐る程居るのだ。
 そして獲物を狩り立てる為の罠もまた、この手に握られている。
 幻獣すら欺いた、清らかな心を持つ処女という肩書き。
 その体面を繕う為の、霊験新たかな秘薬を。
 何も問題無いわ何も、何も、何も。
 それよりも今はこの快楽の中に身を浸しましょう。
 ロリーナは自分で自分の言葉に頷き返すと、ハーバートの唇を奪いながら、ますますその動作を激しくさせる。
 軋むベッドの下。
 衣服と共に持って来られたストールの中、生々しい血の跡がこびり付いた鉈と共に包まれた、あらゆる傷を癒すとされる角を持った首だけの子馬は、赤い闇の内側へとその虚ろな瞳を向けていた。

END

Q.何故一角獣は絶滅したのか? 
A.処女にほいほい付いて行っちゃったから

『処女と一角獣が戯れていた』 在りし日を懐かしむ近世皇火の言い回し


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