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 とりあえず、書く気がある間に消費して置きたい所なので、大分前に見た『ノーカントリー』の感想でも。
 確か、バイト先で皆ががんがん借りて行く中、すわ俺も何か借りて、と浮かされる様に借りてしまった作品であり、ノーカントリーという名称とハビエル・バルデムの髪が何故かターバンに見えて民族問題モノかな? とか実に的外れな事を考えながら観た作品なのだけれど、これがまた実に面白い作品だった。いや最近言って無い気がするが、傑作と言ってもいいのではなかろうか。

 まずサスペンスとして一級品である。極力BGMを廃した息詰まるかの如き無音の中での追走劇は、手を握り締め、集中して鑑賞していた。ハビエル演ずる殺し屋アントン・シガーが登場するや否や、酸素ボンベでポンとやった時は一体どうなる事かと別の意味で心配になったのだけれど、直ぐに画面へ引き寄せられていった。

 これだけでも十二分に見る価値はあるのだが、それと同じ位、或いは以上に、テーマがまた面白い。ノーカントリーというタイトルは、もうちょっとマシな邦題か、さもなくば、原題である「No Country for Old Men」で良かった気もするけれど、個人的にはそれも何か違う気がする。あえてテーマからものを言うならば三者三様の選択だろうか。

 物語は、偶然麻薬の密売現場後に遭遇し、大金を手に入れる事に成功したジョシュ・ブローリンことモスと、その彼を追って組織から派遣されたアントン・シガー、そして更に、彼を追う保安官のトミー・リー・ジョーンズを主にして進行して行くのだが、彼等の物の考え方、人生に対する思いがまた別々で興味深い。ある種の運命に対するこの三人の思考こそが、この作品のテーマだと自分は考える。

 タイトルになっている老人トミー・リー・ジョーンズは、近年凶悪化する事件を憂う善良な保安官で、シガーの事件に対しても同様の感想を抱く。今の世界はさっぱり解らない、そんな自分の居場所は、もう死ぬしか無いのではないのか、と諦念を抱える。

 対するモスは、もっと前向きだ。幸運に恵まれた彼は、それを死守しようと、あの手この手を駆使して追っ手から逃亡する。寧ろ一度は撃退すらしてしまう始末であり、実に男らしい。世界に対して真っ向から立ち向かう者である。ベトナム帰りという設定も、その一環なのであろう。

 だが、結果的にその奮闘は徒労に終わってしまう。襲い来る悲運も、アクション映画の主人公ならば力技で解決出来ようが、サスペンス映画の主人公、つまる所はそこいらにいる様な一般人では余りに難しいのだ。

 そして最後にアントン・シガーであるが、こいつが凄い。ハビエルはこの役で幾つもの助演男優賞を取っているけれど、それもシガーならば納得出来るだけの登場人物で、はっきり言ってこの映画はこいつが主役である。

 シガーの、何が凄いかというと、運命を完全に受け入れてしまっている点である。前者の二人の内、保安官は諦め、モスは抗い、没した。だが、シガーは身構える事無く、同化してしまったのである。運命は最早どうしようも無く来る時は来るのであり、抵抗しようとしまいと残酷に襲い掛かって来る。ならばそれを受け入れてしまえば何者も怖くは無い。これが彼の考えであり、劇中でもシガーは正にその様に行動しているのだが、とてもでは無いが、並みの人間に出来る事では無い。その在り方は超人と呼べる者であり、彼が齎すのは運命そのものだ。だからこそ、ラストもあの様なものとなったのだろう。恐れでは無く、畏ろしい存在である。

 混迷極まる現代。いや現代であるならば何時だって混迷を極めて来たのだろうが、そんな世界、運命を前にして、一体人はどうすれば良いのか、どうあれば良いのか。今作はそんな人生観を描いた作品であり、また同時に良質のサスペンス映画である。形はともあれ、その本質は自分が目指す所でありいやはや凄まじい作品であったな。
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