上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 吸血鬼(ヴァンパイア)
 ただ純粋に行為へと浸れるが故に古代の賢人をして常よりも遥かに精神的だと言わしめた愛の結合点。
 底知れぬ闇に覗く者の探究心を嫌が応も無く掻き起こし、快楽の焔を燃え立たせる素晴らしき竪穴。
 この地球を覆い尽くしておぞましき恐怖を振り落とすと共に、しかし際限無き希望もまた見出す事が出来る大宇宙の深遠が一つの象徴にして特異点たるブラックホール――

 先刻知り合い、早速連れ込み、ホテルの窓辺に広がる夜景の元、ベッドの上での散々な愛撫によって拡がり、今はブラックホールどころかホワイトホールと化した土壱(ドイツ)産まれの少年の菊門を眺めて、私は、そこで味わった極上の快楽をどうしたら詩的に、しかし確として表現出来るかを、、ロスマンズロイヤルの紅茶風味な味わいの中でしきりに考えていた。
 だが、考えれば考える程浮かび上がるのは、言った本人が噴出してしまいそうなものばかりで、私は自身のセンスの無さを痛い程味わう羽目になった。教育などろくに受けてないのだからそれも当然ではないか、と言い訳しても空しくなるだけであり、私は考えるのを止める事にした。
 代わりに少年の直ぐ隣へと体を横たえる。一体何時間やったのか覚えてない程に撫で廻し嘗め廻した、硬い芯の周りに柔らかい肉を纏った体はうつ伏せられ、びっしりと汗と汁に塗れている。ぜぇぜぇと肩を揺らして呼吸する中、それらは粒となって、青い血管が透けて見る生白い肌の上を、背中からシーツへ、或いは臀部へ向けてすべらかに落ちて行った。
 その光景が、別段珍しくも無いに関わらず我が情欲を蘇らせ、私はそっと少年の腰が下に手を置いた。びくりと毛一つ無い尻が僅かに跳ねるのに笑みをこみ上げられながら、静かに穏やかに、私は上の方へと指を移動させる。くすぐったげな震えが彼の肌を覆い、尻から腰、背中、首筋へと至る間に、その震動は大きく、眼に見えたものへと変わって行った。
 そして遂に羊毛を思わす金色の巻き毛へ、そこから頬へと指が至った時、少年は堪えきれずふふっと言う笑い声を上げて、
「もう、あんなにやったのにまだするつもりかい? くすぐったいよ。」
 私の方へと向き直れば、、皇州的歎美さに整えられた美貌が垣間見える。
 それと同時に、笑みによって捲れ上がった上唇から、妙に鋭い犬歯、いや牙が覗けた。吸血鬼として性的に飢えている証拠だ。私が愉しんだ性交が社会一般には異常と見られる様に、彼等の種のそれもまた奇異なるものである。血を吸うという行為が、殆どそのまま、生殖行為に繋がるのだ。勿論、通常通り子宮へ精を送り込まねば子が宿らぬ様に、幾つかの手筈、事前に唾液を体内へ取り込ませた後に、血液を相手側に与えるという行程が必要だが、概要としては同じと思って構わないだろう。その時に得られる快楽は、ペニスとヴァギナを用いたものの数十倍もの快楽を得られるのだと聞く。それだって決して感じぬ訳では無いが比較にならないのだ、と。長い生の時を過ごして来たこの少年の場合、所謂男女の営み……この際、彼が男だという事は忘れてもらおうか……を持ってしても強い性的喜悦を得られる様だが、やはり吸血鬼であるのには変わらないらしい。少年は、私の手を掴んで頬擦りしつつ、紅く染まった瞳を向けて、
「ねぇ君は充分愉しんだじゃない。今度は僕の番だよ。ずっとお預けされてたんだ、その分きっちり貰うんだからね。」
 開いた口の中で白く光る四本の牙を押し付けようとした。
 私はそれを阻止すべく頭を抑え、手を引いた。交わっている最中に血を吸わせなかったのは、体力を消費したくないという単純な理由からだ。体力的にそこいらの成人男性とさして変わらないこの身には少しばかりきついものがあり、今止めたのもそれと同じではある。が、半分だけだ。もう半分はもっと単純で、ロスマンズを全て灰に帰すと紫煙を脇へ吐いてから、私はこう言ってやった。少年の目の前まで顔を寄せ、意地が悪い様に見える笑みを作り、何処ぞの淫乱魔(サキュバス)が言った様な風な感じで。乳は血から作られるからミルクならば嫌という程下の口で飲み下しただろう、と。すると少年は、眉間に皺を寄せて頬をむっとさせながらに、こう応えた。
「嫌だよ。僕は君の血がいいんだ、ちゃんとしたね。」
 この態度がまた可愛らしい。勿論外見的、反応的な意味もあるが、それだけでは無い。彼の年齢は既に二百を超えているのだ。その長い歳月の中で幾多の事を体験して来ただろうに、それでも今だ若々しい精神を保っているという事実は特筆すべきものであり、またその落差が好意へと発展する。二百という数は、実の所そう古参でも無いが、しかし新参という訳でも無く、この域に達した者は、何処か人間性を超越する事が多々あるのだ。ただ、逆説的に言うと、少年のままだからこそ、越えているのかもしれないけれど。
 どちらにせよ、私が抱いた感情には変わり無い。私は、謝罪の言葉を述べながらそっと手を退かすと、両腕で少年を抱き込んだ。ぁ、という小さな声と共に彼の汗ばんだ体が私のそれと密着し、見えずとも感触だけで微笑ましいものだと解る、まだ硬いままの性器が、臍の上辺りに触れる。
「ん……全くもう、随分屈折した趣向の持ち主だと思うよ、君は。」
 私に抱き寄せられた少年は、眼前でそう心地良い声を上げた。自身もまた背中へ腕を廻し、その唇を片方の肩へと押し付ける。金色の巻き毛が鼻先へ当たるのを感じつつ、屈折と呼ばれた事にそうでも無いと言うと、彼はやはりあの快い声音で笑ってから、そっと大口を広げて私の肌に牙を突き立てた。
 まず僅かだが鋭い痛みが奔り、次に何とも言えぬ倦怠さが、波紋の如く全身へと広がって行くのを感じる。血を吸われている為と、唾液に含まれる麻薬めいた成分、彼の種の因子が故だろう。これがただの人であれば、その者も吸血鬼と化すのだろうけれど、幸い私は、別に強い因子を持っている。だから純粋に、この退廃的、背徳的行為へと心身を任せる事が出来た。眼を瞑り、余分な血の気が取り除かれて行くのをじっくり感じ入る。
 ずっとお預けを食らっていた為だろう、少年は実に旺盛な性欲を見せた。視線を横へと向けた先で、青白い頬を真っ赤に紅葉させながら、瞳の奥に恍惚の光を宿してている。喉は先程からずっと高鳴りっ放しであり、合わせて脈動する性器の先が、私の肌に生暖かい滑りを与えるのを感じた。そこで少々の悪戯心が鎌首を上げる。吸血行為に熱中している彼に今手を出したら、どんな反応を示すのだろうか、と。ただ、そう思うだけで結局は何もしない事にした。待ちわびて、いた、彼、に対し、不誠実では、あ、るま、い……

 か、と気付いた時には、もう既に夜は明けていた。窓の向こうには塔京(トウキョウ)の名に相応しい高層建築物郡が朝日を浴びて輝いているのが見える。
 そして傍らを見れば、あの少年は消えていた。代わりに、一通の便箋が、紅白の雫を染みさせたシーツの上に置かれている。内容は読むまでもあるまい。彼は、これまでしてきた様に今回もしたのだろう。今日一本目となるロスマンズロイヤルの煙がゆっくりと昇る怠惰さの中で、私は、その永劫の中の刹那さへと想いを馳せた。が、諦め、再度の眠りへと落ちるのだった。
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://tasogaremignon.blog79.fc2.com/tb.php/681-da9ea0e8
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。