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 俺は今バスに乗っている。友達数人と共に。真っ赤なボディの二階建て観光バスだ。英国の、ほら、あれだ、あれに凄い良く似ている。あれが山間の中をひた走っているのはなかなか滑稽だが、乗り心地は素晴らしい。まるで旅客機のファーストクラスみたいだ。というか、ファーストクラスそのものだ。目の前で上映されている大モニタの映画は『ジャンパー』。表示コメントを見るに、前俺が見た時の感想は間違っちゃいなかったらしい。やっぱアナキンはアナキンだぜ。

 ここでトイレ休憩を挟んでしまったが、困った事が起きた。どうやら俺が持っているチケットは別のものだったらしい。予約をした筈だが、席は別の者のだった、と。金はあるから、これで買おう、帰りのチケットは青春18で、と思ったが、バス側は駄目だの一点張り。仕方が無いのでバスで麓まで運んで貰い、タクシーに乗り換えた。既に先客二名が居て、何だかだんまりを決め込んでいたが、俺は構わずに目的地目指して進み出した。

 九十九降りの坂を登り、やがて鬱蒼とした森の中へ入れば、野生動物の宝庫だった。色々な奴が居る。見た事も無い奴も。例えばオレンジ色のタテガミを生やした豹なんて俺は知らない。いやあれは虎だったかもしれないが、まぁどちらでもいい、要するに猫ちゃんだ。そして、その中に何頭か、ワナカバの子が潜んでいる。地中に身を潜み、大口を開け、馬鹿な赤ん坊タテガミ豹かタテガミ虎が入って来るのを一生待ち構え、と一匹犠牲になった。道には、ワナカバがうようよしてやがる。大人まで居るぜ。

 そうこうしている内に目的地へとタクシーとバスが付くと、俺は降りた。と、そこに運ちゃんの声がする。「一人に三匹は居るからねぇ、注意するんだよ」何が一人に三匹なのか解らないが、とりあえず急勾配の坂となった落葉の道を進んで行くと、嗚呼意味が解った。タテガミ豹だかタテガミ虎が徘徊しているのだ。成る程、そういう事かと、俺は坂の一番下の、コンクリートの壁にへばりつき、どうにか目に付かない様、こっそりと歩いた。だが、二匹目の野郎が、野太い糞を出して、しかもそれが転がって来たものだから、俺は思わず悲鳴と共に飛び上がって避けてしまったのだが、これが不味かった。二匹目はほえただけなのだけれど、三匹目、これは矢鱈にでかい雌ライオンだったが、こいつが小便ぶちまけながら襲ってきたのだ。俺は慌てて壁を登り、その上に付いた白いフェンスを握った。雌ライオンは物凄いスピードで俺の真下までやって来た。これは危うい、と思う間も無く、この猫ちゃんギャーが、襲い来るのを、スーパースローカメラで横から見た俺は、だんと、タイミングよくその頭を踏んだ。小さな顔がむぎゅっと潰れ、ぺちゃんこになる映像は笑えるが、当事者は俺だ。笑えない。不味い事に相手の戦意は鷹揚で、今のでまず間違い無く怒らせてしまった。仕方が無い。どうなってるか知らないが、と俺は、もう一度跳び上がってきた雌ライオンの頭を踏み台にして、白フェンスを飛び越えた。古来より、でってうジャンプは有効な手段だが、往々にしてその先は奈落と決まっていたりする。俺は神様のアイロニーを呪いながら、白フェンスを反対側から捕まった。足元から風が吹き込み、耳元で鳴って行く。気付けば雌ライオンが真上に居て、涎がぽたぽたと掛かって来た。嗚呼、俺はこいつに咥えるんだ、と思ったが、そんな事は無く、俺は今家族とショッピングモールで買い物をした後、伊太利亜に居た。

 いや本当に伊太利亜かは解らない。ただ母親が「流石伊太利亜ね」と言っていたので、多分伊太利亜なのだろう。豪快に半分河に沈んだ道を、自動車ビッグホーンで乗り越えると、また母親が「見て、青があるわ」観れば確かにその通り、青がある。川縁の道を進みながら見える渓流は透き通って、空が映り込んでいるのだ。何と、豪快に堕ちる滝の上にも空が見える。流石伊太利亜、渋い事をしてくれるじゃないか。

 そこから山をぐるりと廻り込み、中途で車を降りて山道を登り出すと、またしても母親が「鯉がいる」と言う。既に河は無く、地下を通った滝しかないのに、と見れば、成る程、草の上に鯉の木乃伊があった。恐らく滝からここまで跳んで来たのだろう、龍になれなかったのは哀れだ、とは父親の言。そうして上へ、上へと行くと、建物が見えて来た。バスの連中曰く、まだ開店時間じゃないらしい、と言っている間も無く、するりと開いて、俺達は中に入れば、和服の伊太利亜人達が畳の上で正座している。偉い緊張しているが、どうやら始めてらしい。初心な奴らだ。そして、おっちゃんが、パスタの解説をしてくれる様だ。これは期待と手渡された冊子を読んでいると、行き成り親族一同で奥に呼ばれた。

 叔父が死んでいた。叔父とやらが、誰かは良く解らないが、ともあれ叔父であるらしい。葬儀が既に始まっている。俺は直ぐに着替えを整えると、愚図な次男をどやしながら、葬列に並び、奥へと入った。そして、叔母さん曰く、叔父が死んだのは俺の所為らしい。何故かは解らないが、ともあれそういうものなのだろうと納得すると、どんぶりを手渡された。これは、と聞くと、この地での風習だという。観ればたんまりと汁が入った中で顔が浮んでいる。叔父だった。箸を渡されたという事は、食えと言う事らしい。突っついている間に何かぐにゅりと柔らかいものにあたったので何だろうと思ったら、目玉だった。これはちょっと、まぁデザートみたいなものだし、と戻して、変わりにべらべらと頬革を取り、口に入れた。醤油汁で煮込まれたのか、なかなかコラーゲン一杯で美味だったな。少し焦げ味が強過ぎたのが、難と言えば難なのだ。

 戻って来ると、畳の部屋で親族一同が輪に成っていた。何をしているのかと見ても、良く解らない。父親が何か言っていたが、聞き取れなかった。ただ、どうも所謂遺産相続の様なものらしい。お盆の上に一人一つずつの指輪が乗せられていて、それを己が功績に準じて、箸で掴み取って行く様だ。次男が真っ先に取ろうとしたのを手で制しつつ、俺は指輪を手に入れた。見た目はまるであれだ、瓶の蓋を取った後に残るアレだ。そうしてアレをしげしげと見ていると、黒板に書かれた俺の名前の隣にあった白い何かが消された。それが功績と言う事らしい。もう良く覚えていないが、ファンタジアとかゲーテとかいうのもあって、どうもそれは叔父さんのものらしい。ゲーテ行けゲーテと思ったが、ファンタジアが消された。きっとあれはテイルズの事なのだろう、と鬼武者とかもあったので確信を持って俺は頷いた。
 という夢を見たのだが、一体俺の脳裏には何が潜んでいるのだろう。大いなる解釈を求めるなり。
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