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 ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ最後の言葉
 リヒテンベルク氏が何やら奇妙な発明を行なっているという噂を街の者達が耳にした時、彼等は異口同音にこう言った。あの学者先生、またやってるのか、と。
 知っての通り、彼は算譜機械(コンピュータ)と自動人形(オートマタ)の権威だった。その道の特許も数多く取得しており、有名な『リヒテンベルク式階差機関用潤滑油』や『リヒテンベルク式合成樹脂皮膚』の名に関された、リヒテンベルクとは彼の事である。金は相当持っていた。人当たりも良い。既に結構な年齢に達しており、髪も髭も白くなってはいたが、皺は少なく、すらりとした、なかなかの男前である。
 それらの事を町民達は良く知っていたが、同じ位リヒテンベルク氏の悪癖も知っていた。彼は、人々があずかり知らぬ技術を魔法の様に、それを扱う自身をファストゥス博士の様に振舞って見せては奇行に走る事でも有名であったのだ。
 例えば先の潤滑油を発明する際、リヒテンベルク氏は全ての店屋に工房、そして塵捨て場に赴き、手に入るならば鼠の糞でも構わないとばかりに目に付いたものを次から次に革袋へ押し込み、郊外にある自宅兼工房へと運んだのだ。
 大荷物を背に、当時はまだ黒かった髪と髭を揺らして歩く姿に、見兼ねた住人が何をしているのかと尋ねると、彼は悪戯っぽい笑みを浮かべて、こう告げた。
「嗚呼、ちょっと私の子供達の頭を良くしてやろうと思ってね。何、原初じゃ林檎一つ食べただけで身に付いた知恵だ、これだけあれば神も造れるだろう。はは、良く、実に良く出来そうだ。廻れ廻れ、廻れ歯車、運命の歯車、だよ」
 勿論これは冗句である。が、終始この様な感じである為、人々もすっかり慣れっこになってしまっていた。件の住人も、ウィンクと共にこう返したという。
「確かに。でも、それだったら、林檎も混ぜれば完璧じゃないですかね」
 因みにこの意見は採用され、潤滑油完成の為の重要な要素となった。厳密には林檎自体で無く果物の果汁だったが、『何、汁にすれば同じ様なものだ』。少なくとも、彼はそう言っている。悪戯っぽい笑み、そしてウィンクと共に。
 ついでながら『私の子供達』とは、歯車式人工頭脳を搭載した自動人形の事である。リヒテンベルク氏に子供は居なかった。もとい、妻が居なかった。今の年齢になるまで只管碩学の徒であった為、結婚……彼が言うに『有機的生命開発の為の事前契約』……する暇も志も無かったのである。これもまた彼を奇人としている要因だと、ご婦人方の溜息交じりに思われている。
 ともあれ、リヒテンベルク氏が何をしていようと、誰も気にしなかった。
 そういう男だと、街の誰も彼もが思い、呆れ、今度は一体何を造っているのやらと勝手な推測を立てては、好き勝手に笑い合っただけである。
 ただ一人の例外を抜かして。
「へぇ、それはまた、変わった人がいるものだ。実に面白いじゃないか」
 彼の名前はクリストフと言った。
 最近になって大学に通う為にこの街へやって来た青年である。彼は大学では専ら文学を学んでいた為、リヒテンベルク氏の事を殆ど知らなかった。もしかしたら新聞か何かで名前程度は見た事があるかもしれないが、それ位である。
「それで一体、そのリヒテンベルク氏が、今何をしているっていうんだい?」
 そこで若く逞しい好奇心に掻き立てられたクリストフは、地元出身の友人に麦酒一杯奢って、噂の真相を確かめようとした。
 酔っ払いの喧騒に包まれた中、紡ぎ出されたのはこの様な話だった。
 最近のリヒテンベルク氏は、滅多に家から出ず、昼夜を掛けて何か作業に没頭しているらしい。自宅兼工房へと近付けば消える事の無い窓明かりが垣間見え、甲高い金属音が聞こえて来る。家から出るのは一週間に一度で、その時一週間分の買い物をする。この辺りは学者気質の為だろうが、特筆するべきはその後に、街の余り大きな声では言えぬ場所に赴く事であるという。まぁ要するに売春街だが、これは確かに異な事だ。これまでリヒテンベルク氏がその様な性的なものに興味を持った事は無かったのだというのに。嘆かわしいとご婦人方は言っている。しかし、まだ日が高い時にも行っているので、それが今行なっている研究の一環であるのは間違い無いだろう。ただ結局日の沈んでからも向かってはおり、そこの者達の証言でも確かに快楽に耽ってはいるから、ご婦人方の嘆く余地はある。紳士にとってすれば嗜みの様なものなので、どうと言う事も無かったが。
 それにしても、今回は一体何があったのか。流石に訝しがった者が、明け方街を行くリヒテンベルク氏に聞いた所、彼は赤く充血した瞳を擦りながら、
「神がアダムとイヴに仕込んだ生産機能がどんなものだったのか、確かめに行ったんだよ。始めて知ったが、込み入っていて燃費が悪いな。あれは駄目だ」
 と言って、最後にとんとんと腰を叩いた。その台詞から解った事はたった一つだけだった。つまり、この年になるまで、彼は貞節を護っていたのである。
 ご婦人方は喜んで良いに違いない。
 紳士には嗜みだから無関係だろう、それを破る時の為の。
 そして最後まで聞いた非童貞クリストフの唇から出たのは、落胆の言葉だった。
「何だ、結局誰も詳しくは知らないんじゃないか」
 その台詞に対して、友人は苦笑いを浮かべながら言った。
 そういう男だ、リヒテンベルク氏は、愚かな賢者であると共に賢き愚者で、正しくどちらなのか、愚者にも賢者にも成り切れない我々には、それを判断する力は無いし、それにどちらでも構わないのだ、と。
 まるで彼の口振りが移ったかの様な調子で。周囲の酒飲み達もそれに付随する様に頷き、あの人はなぁ、と苦笑しながら応じた。
 詰まる所、町民達からすれば無害に面白い男だから……算譜機械と自動人形が、もっと都会か、或いは田舎の街でどの様な使われ方をしているか知れば、なかなかこういう言葉も出て来るまい……別に何だって構わないのである。
 無論の事、クリストフだけは違っていた。
「謎は知るべきものだろ、それは単に怠けているだけだ。よし、それじゃちょっと俺が調べて来てやるから、ここでじっくり呑んでいてくれよ」
 彼はそう言って独り乾杯の音頭を取ると、ジョッキを一気に煽り、たんとテーブルへ打ち付けた。空になった木の器と、器となった木がぶつかって小気味良い音が上がるや、それを合図とする様にクリストフは立ち上がり、ジョッキの傍らに小銭を置いて、皆が冗談混じりに止めるのも構わず、颯爽と酒場を後にした。
 学問の道を行く若者に取って、隠されているものは暴くべきものなのである。
 その熱意の糧に暇な学生生活と、麦酒の火照りがあったのは言うまでも無い。
 またカウンター席で呑んだ暮れていた男の野次も、微かに絡んでいたかもしれない。大した意味も無いのだろうが、それはこの様なものである。
「止めとけ止めとけ若人よ、お前も光輝を忌避する者(メフィストフェレス)に捕まっちまうぞ」

 と、この様な事があって、リヒテンベルク氏の奇妙な研究とやらの真意を確かめるべく、クリストフは氏の自宅兼工房へと歩き出したのである。
 それは街を囲う古い城壁の端にあり、また門から最も遠い場所にあった。
 彼は熱に浮かされた様に足早に向かった。雑踏のばらつく通りを抜け、瓦斯灯の角を曲がり、家と家の間を抜けて、煉瓦の塊が見えてくるまで一心に。
 辿り着いたリヒテンベルク邸は、一見だと何の変哲も無い建物だった。ただ確かに金はある様で、周囲の物より堅牢に、また大きく見えた。分厚い木戸の上には看板があり、歯車の中に浮かぶ一つ目の碧眼が描かれている。氏の紋章なのだろう、その下には名が記載されている。『LICHTENBERG』と。
 クリストフは木戸の取っ手を掴むと、一拍を置いた。
 半ば勢いに任せて来てしまったが、直前に来て躊躇が鎌首をもたげた。
 知人でも、ましてや街の人間でも無い者が行き成り押し掛けて何をやっているか尋ねるだなんて、流石に失礼では無いかと思えて来たのである。幾ら学生であれ、彼にもそれ位思慮するだけの礼儀がある。
 さてどうしようか。彼は頭の中でそう自問した
 が、自分で聞いて自分で言うだけに、答えは直ぐに返って来た。
 今更である。ここまで来てしまったのだから、もう戻れまい。
 そう言う別の自分に後押しされ、意を決したクリストフは取っ手を叩いた。
 とんとんと、軽く、それ程耳障りでは無い程度に。
 返事は無かった。今度は力を込め、耳障りな位どんどんと叩く。
 やはり返事は無かった。
 クリストフは、はてと首を傾げ、そして気付いた。リヒテンベルク氏は引き篭もって作業に没頭しているのでは無かったか。今、その証である音も光も、何も感じられない。氏は留守なのだ。今日が一週間に一度の買い出しの日なのだ。
 落胆と、そして安堵が湧き上がった。何だ居ないじゃないかとも思ったし、同時に良かった居ないじゃないかとも思った。クリストフは、そういう男である。いや、青年は、と差し替えるべきかもしれないが。
 ともあれ、これではどうしようも無い。何処で何をしているのか、大方の予想は付いているが、そこまでする気は起こらなかった。彼はやれやれと首を振り、息を吐き出すと、そっと取っ手を離して振り返ろうとした。
 と、そこでまた気付いた。木戸にほんの少し、隙間が出来ているでは無いか。
 はっとして、クリストフは扉を押した。鍵が緩かったのか、それとも最初から掛かってなどいなかったのか、それは驚く程呆気無く開いてしまった。
 再び猫をも殺す感情がむくむくと起き上がって来るのを、クリストフは感じた。同時にまた別の自分が、聞いてもいないのに言うのを感じる。これは機会だ、知る為の良い機会だ、お前はそれを見逃すのか、それで良いと思っているのか。
 思っていない、と彼は返すと、やれやれと首を振り、息を吐き出しながら、するりと扉の中へと身を滑り込ませた。青年とはそういうものだ。
 そうして入ると、意外な程に普通であった。外同様、語るべき所は殆ど無い。少々清掃が行き届いていない様にも思えるが、独り身ならば仕方もあるまい。
 己の下宿先を思い出しながら、彼は廊下を進んだ。当然の事ながら、何がどこにあるのかさっぱり解らない。闇雲に進んでは扉を開けて行く。盗人の気分だ。
 と、幾つか巡った時、他よりも広い間取りの部屋へとクリストフは至った。
 そこが作業場であるのは直ぐに解った。珍妙の度合いが桁違いなのである。
 心音を高まらせ、脳汁を煮させながら、彼は踏み込んだ。
 照明の付いていない薄暗い工房は、工具と図案と部品で溢れていた。クリストフにはさっぱり用途や意味が解らない類の山である。どれも手入れ自体は行き届いている様で、見渡す限りに埃を被っているものは無かった。
 その間に並び立っているのが人形と人形と人形、そして人形であった。
 彼は散らばる有象無象を踏まぬ様注意しながら、それらを見て行く。
 全てリヒテンベルク氏の手によるものだろう人形達は、老若男女、様々の容姿をしていた。衣服を纏っている物も居れば継ぎ目を剥き出しにしている物も居り、また完成途中なのか、部位が欠けている物や中の機械が露になっている物、所か意図的にそう造られたに違いない化け物じみた物も居る。虚ろに窪んだ眼窩、異様に長い耳朶、肩から飛び出た配線の数々、首の無い偽者の赤ん坊、腕と脚の畑に置かれた四肢の無い幼女、本当に脚が三本ある老人、空っぽの内側と穿り出されたその中身を抱える青年、開け放たれた頭蓋の奥で静止状態にある歯車の群れ……人形でもなのか、人形だからなのか、見ていて気持ちの良いものでは無い。科学者の産物というよりも、芸術家の狂気に思えて来る。
 だが、その印象を間違い無く後押ししているのは、全てに共通する写実主義だ。
 外身も中身もバラバラである人形達は、しかしリヒテンベルク氏の類稀な技術と、恐らくは類稀な精神によって、例外無く人間に似せて造られていた。
 次から次にそれらを眺めながら、クリストフは不思議に思う。何故表情一つ変えない、いや畸形と呼ぶにも憚れる人形達まで、人間に見えるのかと。もし、こんなものが動き回っていたならば絶叫と共に拳を上げるのは間違いあるまい。
 何とも嫌な気を、クリストフは下腹部に感じた。勿論この後幾らでも手を加えられるのだろうが、未完成品がしかと動いている様を想像してしまったのである。
 彼は新鮮な空気が欲しくなった。この気分を払拭するだけの新鮮な。
 と、そこで外に戻ろうとした時、クリストフの目に一体の人形が止まった。
 そうして彼自身の動きもまた止まった。
 クリストフが見たのは、年端も行かぬ少女の人形だった。
 黄金色の長い髪を腰の高さまで波打たせ、額で分けられた前髪の下、整えられた白い顔立ちの中で、左に青の、右に緑の光宿した猫の眼を持っている。小柄な体躯で背丈も肩幅も彼の半分程にも満たないが、妙に魅惑的な赤い唇をしている。白磁の肌、そうして身に纏った黒のドレスとが、実に好対象だった。
 一体これは何だろうと、クリストフは己が胸元を掴んだ。体はまともに動かせないのに、心臓だけが妙に早い鼓動を刻んでいる。まるで発条玩具の家鴨が、水面下で脚をばたつかせている様だ。実に息苦しいが、理由が全く解らない。何故人形如き見た程度で、こんな風になってしまったのか。確かにこの少女は他の物よりも明らかに美しく、すこぶる可愛らしく、完璧に人間らしく見えたが、しかしそれだけの、たかが人形では無いか。だというのにどうして、どうして俺は、
「私はそれを油圧式悪魔と呼んでいる」
 クリストフの思考が止んだ。びくりと飛び上がり、声がした背後へと振り向く。
「或いはグレートヒェンと。その娘自体には、そう名付けている。だが、君を見ていると、別の名前で呼びたくなるな。即ちそうだ、オリンピアだ。捻りが無いか? そうかもしれない。だが、合致はしていると思うね」
 扉の蝶番に背を傾け、くちゃくちゃと缶詰肉を直に食しているその老人を、青年は見た事が無かった。が、どう見ても、彼がリヒテンベルク氏に違いない。
 クリストフは慌てて身仕舞いを整えると、どうにか弁明しようとした。自分は決して怪しい者では無く、いやそう見えたのだとしても無害な者であり、もし仮に逆な風に思われてもそれは全くの誤解で、少なくとも何も盗む気は無い、と。
 だが、それらの言葉は彼が何か言うよりも早く、氏の差し出した片手によって静止させられた。口髭に半ば隠れながら釣り上がる唇が示すのは、全てを知っている余裕であり、その上で反応を見る者の喜悦である。
 何とも居心地の悪いものをクリストフは感じたが、非は明らかにこちら側だ。そしてまたリヒテンベルク氏が、演技めいた振る舞いを好むのを思い出す。これもその一環に違いないと観念すると、彼はちらと人形へ視線を流し、
「嗚呼、ホフマンとは、確かに何の捻りも無い。ですが、僕はナタナエルじゃありませんよ。精々フランツだ。何にせよ、人形になんて興味はありません。もう二十歳を超えてますからね、遊戯の時間は終わってますよ」
 そう言いながら馴れ馴れしくグレートヒェンの金髪を撫ぜた。本物の髪の毛か、それともこれもリヒテンベルク氏の発明か、それは触り心地良く指の間を抜ける。
「そうかね? それなら私も良いのだがね。何せ、それは悪魔だから、安易に手を出してはいけないよ。で無ければきっと、酷い目に合ってしまう」
「それは一体どういう事ですか。こんなに綺麗な姿なのに」
 名残惜しくも人形の頭部から手を離したクリストフがそう聞くと、リヒテンベルク氏はますます頬笑みを強めた。余程悪魔的に見えるその表情に青年がたじろぐが、氏はお構い無しである。七色の後光担って素敵な笑顔を浮かべている中年が描かれた空き缶を懐へ仕舞いつつ、彼はグレートヒェンの方へと近付いて、
「そう見えるのは恐らく君だけだ。私にはとても、とてもとても邪悪に見える」
「邪悪ですって? これは貴方が造った筈でしょう? 何を言っているんです」
「嗚呼その通り、作り手である。だからこそ、君に解らないものを私は解っている。これがどれだけ邪悪か、何故悪魔なのか、君よりも余程、余程だ」
「意味が、意味が解りません。自分の子じゃないんですか」
 その細い顎に手をやり、何度か摩って見せる。クリストフはその動作を間近で見、嫌悪感に似たものを覚えた。いや、紛れも無くそうだ。歯車が頭の中で軋んでいる。これは陵辱だ。父親が実の娘を陵辱しているのと一緒だ。顔色を変えず、逃れようともしないが、グレートヒェンが生きた乙女の様に酷く悲しげに見えた。
 いやそうだ、そうであるに違いない。
 と、クリストフが思った時には、もう既に手が伸びていた。
 今だ逞しいリヒテンベルク氏の腕を掴み、その手を彼女から離させる。彼は眉間に皺を寄せ、出来るだけ恐ろしい声音が出る様に喉を振り絞って言った。
「お止めなさいリヒテンベルクさん。彼女が嫌がっているじゃありませんか」
「ほほう、君にはやはりそんな風に見えているのかね」
 言ったつもりだが、しかしあの悪魔的微笑は微塵も揺るがない。それが別に苛立ちをも覚えさせ、クリストフは叫ぶ様に言った。その爛々と生気に溢れた緑の瞳で、得体の知れない黒ずんだ青の光を讃えている眼を睨みつけながら、
「見えます。僕僕には、グレートヒェンが嫌がり、悲しんでいる風に見えます」
「それは誓っても良いのかね?」
「えぇ勿論、誓ってもだっ」
「宜しいっ。良い、実に良い言葉だっ。気に入ったっ」
 リヒテンベルク氏は、しかしと言うべきか、やはりと言うべきか、その態度を変えなかった。寧ろ一際それを強めた為、クリストフは思わず手を離してしまう。彼が本当にファストゥス博士と思えて来たのだ。もしくは先に取り上げられた砂男か。どちらにせよ縁起でも無い。きっと『光の山麓(リヒテンベルク)』という名も偽名だろう。何が人当たりの良い人間だ。これではただの狂人では無いか。
 己が犯した不法侵入の事をすっかり忘れて、クリストフはそう思った。更に最後の言葉は後一歩の所まで口に出掛かったけれど、寸での所で抑えられた。リヒテンベルク氏が突如手を胸前に置き、謝罪の言葉を述べたからである。
「いや、いやいや、名も知らぬ相手に失礼した。どうも昔から、興奮するとそれに全ての意識が注がれてしまう。妻にも言われたが悪い癖だ、お詫びする」
「あ、いえ、こちらこそ申し訳ありませんでした。勝手にお邪魔しておいて」
「ならば助かる。では仲直りと自己紹介だ、私はリヒテンベルクと言う」
「え、はい、僕はクリストフと言います」
 そう言って差し出された手を、青年は一瞬どうしようか迷ったが、先程とは打って変わった態度へ直ぐに心動かされ、さっと握手で返した。その頬は赤くなっている。自分が彼と、そして彼の造った人形に何と言ったか、思い出したのだ。
「クリストフ、クリストフか。実に良い名前だな、救世主(クリストフ)」
 その顔を見詰めながら、リヒテンベルク氏は思案顔で何度か頷く。
 と、そこで彼はそっと手を離すと、ちらとあの人形の方を見、
「だがクリストフ君、それでも私が言った事を忘れては行けないよ。彼女を何の為に造ったか? それは言えない。そういう約束だし、だってそれに面白くないじゃないか。でも何にせよ、ろくでも無いのは確かだから、口外は無用だ。どうせ誰も気にしまい、私はそういう男なんだよクリストフ君……解っているね?」
 次いで向けられた視線に、クリストフは背筋を震わせる。表現だけは知っていたが実際に見るのは始めての、眼だけ笑っていない表情をそこに見たからだ。
「肝に、銘じておきます」
「宜しい。それでは今日はもう帰りなさい、私にはまだやるべき事があるのだ」
 それから青年がおずおずと頷くのを確かめると、リヒテンベルク氏はすっと脇に退き、片腕を上げて出口の方を指し示した。
 どうも最初から自分の事を知っていたのでは無いかというその揺ぎ無い行為に、クリストフは更にばつの悪い想いを抱いたが、何とか首肯して見せ、
「えぇありがとうございました。それでは」
 そう言って素早く立ち去ろうとする。
 と、彼が作業場を出、廊下に至った時、その背へ向け……恐らく、あの頬笑みを浮かべながら……リヒテンベルク氏は叫ぶ様に告げたのは、こんな言葉だった。
「嗚呼御機嫌ようクリストフ君また逢おう、グレートヒェンも待っているよっ」

 クリストフはその言葉を無視した。
 先の誓いも少女の人形ごとも、何もかも忘れようと勤めた。
 リヒテンベルク氏の自宅兼工房から出て、傾き始めた橙色の太陽を目にした途端、彼は氏や、氏についての何もかもが馬鹿らしくなったのである。成る程あれはそういう男だったと、誰もがそうする様に頷けた。この光満ちる世界では、彼の存在は何とも滑稽で、信じるに値せぬものに思えた。全てはあの一室、普通普遍が罷り通った中で唯一奇異な空気を漂わすあの一室の所為だったと感じられた。
 だから苦も無く最後の約束を護る事が出来た。
 クリストフはリヒテンベルク氏に逢った事を言わなかった。
 酒場に戻ればまだ友人が居て、彼を含む皆からどうだったと尋ねたけれど、結局逢えなかったと伝えた。そら見ろ、だから言っただろうと、笑われたが別に構わない。青年も、またそう笑ったのだから。
「いや全く、どうしようも無いなぁ、リヒテンベルクさんは」
 しかし、グレートヒェンは別である。
 クリストフは彼女を、いやそれを、頭から追い出そうとした。あの金色の髪を、その感触を、あの白い頬を、あの赤い唇、彼女が、いやそれが語った……語ってはいない、語ってなど、何も言ってはいないじゃないか……ともあれ、語られたかもしれない赤い唇を、あの黒いドレスを、あの白い頬を、あの悲しそうな表情を、あの顎の感触を、あの細い体躯を、あの色違いの青と緑の瞳を――
 だが無駄だった。帰路でも、酒場でも、また下宿先でも、クリストフの中からグレートヒェンの姿は消えなかった。何と言う事だろう。ただ少し、ほんの少しだけ、彼女を、違う、それを見ただけなのに、別に何があるという訳でも無いのに、忘れられなくなっているだなんて。
 彼は寝具の上、シーツの中で、頭を抱えた。と、そこで自身の手に付いた僅かな匂いに、彼女のものである芳しくも甘ったるい少女の匂いに気付き、それがそうだと解ってしまう今の自分にクリストフは気が付いた。
 彼は愕然とした表情を浮かべると、石鹸を使って熱心に手を洗い始める。
 匂いは取れなかった。どれだけやってもまるで消えず、消えないと意識すればする程に、ますます鼻については、グレートヒェンを思い出させる足掛かりになる。息苦しさも増し、辛抱堪らないという有様で、実にどうしようも無い。
 最早ここまで来れば、クリストフも認めざるを得なかった。
 つまり彼は恋をしたのである。
 あの人形に、あの人形に、あの人形に、あの人形に、だ。
 異常である。少なくともクリストフにはそう感じられた。
 もっと世の裏側を知れば、自動人形の大半の目的がそれに付随するものだと知っただろうが、しかし彼はまだ若く、初心だった為、異常としか思えなかった。
 まさか生きてもいない物に恋をしてしまうなんて、どうかしている、と。
 しかし実際の所、どうかしてしまったのだ。
 クリストフは、呻きながら再びベッドへ入ると、その頭を抱えた。こんな事ならば、下らない思い付きでリヒテンベルク邸になど行かねば良かったと後悔し、また香って来た愛しの少女が匂いに悶絶した。恋する青年とはそんなものだ。
 そして気が付くと、彼の中にはたった一つの望みが出来上がっていた。
 幾度も繰り返し繰り返し紡がれる言葉は、凡そこの様なものである。
「彼女だ、彼女に逢わなくてはならない、彼女に、僕を待っている彼女に……」

 かくして、歯車の円に縁取られた青い眼球が見守っている中、リヒテンベルク氏の自宅兼工房の木戸は再び同じ人間によって叩かれた。
 あれから一週間、クリストフは後悔と悶絶の中で待ち続けた。再びあの男が外に出るという日を、実際に出て来る瞬間を物陰に隠れ見送って。許可の無い訪問にも快く応じ、愛想良く帰してくれた氏だから、赴けば別に何事も無く招き入れてくれたとは思うけれど、しかし何故か彼が居る時には行きたくなかったのだ。
 それでも不安だったのは、また不法に侵入する事だった。いや正確に言おう。また扉が開いているか不安だったのだ。誰も来ないだろうと、たかを括っていたのかもしれないが、生憎と来訪する者が現れた。と、なれば、次はもう無いかもしれない。クリストフはそれが心配だった。折角グレートヒェンに逢いに来たというのに、逢えず仕舞いになってしまうのが、不安でならなかったのである。
 しかし、彼の不安は杞憂だった。木戸は開いた。この前の様に、押すだけで簡単に、易々と。鍵は掛けられていなかったのである、またしても。
 その事実を、クリストフは素直に、純真無垢な気持ちで喜んだ。
 しかし本当の喜びは、扉では無く、その向こうにあった。
 一週間前と同じ様に邸の中へ脚を踏み入れた彼は、廊下に立つ人影に気付いた。クリストフははっとして瞼を大きく開いた。一瞬まさかと思ったが、それも直ぐに消えた。リヒテンベルク氏が何の権威であるかを、あの作業場の人形達がどの様なものであったかを、氏が最後にしなくてはならない事があると告げた事を思い出して、嗚呼いや、そんな事は関係無い。仮令光乏しい場所にあってその姿が良く見えずとも、また彼を前にして声一つ音一つ上げずとも、距離を隔てて尚香るあの匂いとおぼろげに映る輪郭で、クリストフには彼女と解っていた。
 だから彼は呼んだ。その名を、愛しい、待ち侘びたその名を。
「……グレートヒェン」

 それからリヒテンベルク氏の寝室へ赴き、二人用の寝具に身を横たえるまで、クリストフは一言も口を利かなかった。
 グレートヒェンもである。やはり彼女はそういう機能を持たされていないのかもしれない。それを言えば、表情もずっと変わらぬままであり、廊下を渡り、共に階段を登る中、クリストフは、これが悪魔の所以かと感じた。つまり、意思疎通手段の欠落である。成る程、理由は知らないが、確かに醜いと言えるかもしれない。人間にして、最も人間らしい要素が抜けていると言えるからだ。
 が、そんなもの、彼にはほんの些細な違いに過ぎなかった。言葉を交わさずとも、表情に意思宿らずとも、僅かに揺れる金髪から漂う匂いが、握り締めた手から伝わる柔らかな感触と暖かさから、クリストフには解る。リヒテンベルク氏の言葉は正しかった、彼女は彼の事を待っていたのだ、と。
 今、共に向かい合って寝ているこの時でも、彼は確かにそれを感じる。
 クリストフはグレートヒェンを見詰めた。その青と緑の瞳を、己が緑の瞳で持って。そこにある光は宝石の冷たいものだったが、彼は暖かさを覚えた。その奥に仄見える自身の姿に、何とも愉快な、だが心安らぐものを見た。
「グレートヒェン」
 そう言って手を伸ばす。彼女の髪へ、髪へ、そこから肩へ、背中へ。
 クリストフはグレートヒェンを抱き寄せた。何の抵抗も無く、近くへと寄った体は軽く、芯のある柔らかさをしていて、じんわりと熱を放っている。これが人形の体かと彼はしみじみ思った。何も変わらないでは無いか、と。確かに芯は骨では無く、中は実質空洞で、そしてまたこの熱も体内の機関が稼動しているからに他ならなかったが、それを言えば人体だって原理的には同じなのだ。クリストフは、かつてリヒテンベルクが言ったという言葉、結婚の別称を脳裏へ浮かべ、声も無く微笑んだ。逐一貴方は正しい、正しいですよお義父さん。
「グレートヒェン」
 そしてこの匂いっ。青年は女性を知っているけれど、こんなものは始めてだ。豊かな黄金の髪へ自身の顔を埋め、鼻から口から思う存分に吸い込む。甘美な、途方も無く甘美な香が肺腑に満ち溢れ、血管を通って全身へと駆けずり、やがて脳髄に至った瞬間、クリストフは天にも登る気持ちになった。
「グレートヒェン……愛しているよグレートヒェン」
 その心を言葉に込めて、彼は少女の耳元に囁く。反応はただ一つ、己が
腕に巻き付けられた手が、僅かに力を増させる事だが、しかし充分だ。
 そっと顔を上げると、クリストフは再びグレートヒェンの正面を見た。
 グレートヒェンもまたクリストフを見詰め、青と青と緑の視線が交差する。
 それが運命の糸の様に結び付き、二人の唇を一つにするべく引き寄せ合った。
 林檎の様に赤い唇が近付き、クリストフは瞳を瞑る。
 そして一瞬の間の後の感触は、彼の魂をかき乱すのに十二分であった。
 何処かでスイッチが切り替わる音がするや、青年は貪る様な舌使いで少女の唇を味わった。何度も何度も、味わっても味わっても味わい尽くせぬ霊酒を彼は啜り、隠れていたグレートヒェンの桃色の舌が、その情動を何処までも煽り立てる。
 漸くクリストフが唇と舌を止めたのは丸々数分立ってからであり、殆ど息継ぎもせず口吸いをし続けた彼は、恋愛と情欲の効もあって、荒い息遣いだった。二人以外誰も居ない部屋の中にあって、その吐息は酷く響き渡った。
 と、その最中、クリストフは思いも寄らぬものを聞いた、と最初は思った。疲労の中で妙な空耳をしたのか、と。だが、そうで無い事に気付いたのは直ぐであり、彼はグレートヒェンの声を始めて聞いたのである。それは良く磨き上げられた金の鈴の様な美しい音色で、彼女は恋人が気付くまで、延々と囁いていた。
 来テ、と。
 その言葉に逆らうだけの理性は、もう欠片も残っていなかった。仮令あったとしても、瞬時に粉微塵と化したであろう。いや、何故逆らわねばならないのだ? 自身望み、そして彼女もまた望んでいるのだという事を。
 クリストフは当然の様に逆らわなかった。獣じみた歓喜の咆哮を上げ、自らの衣服を脱ぎ捨てると、グレートヒェンのそれを丁寧に、だが素早い手付きで取り除かせた。その様な機能がある保障は何処にも無かったけれど、しかし何の疑いも持つ事無く、彼女の下着も拭い去ってやれば、成る程、確かに存在した。
 太古の昔に隠されたイヴの神秘が、アダムの子孫の直ぐ目の前に。
 毛一つ皺一つ無く、隙間から蜜を滴らす一本の薄桃色の筋を見、クリストフは再度グレートヒェンを強く抱き締めた。頭蓋の中を芳香で観たし、耳に心地良い鈴の声を受けながら、彼は彼女の耳元に囁いた。求める者への対の句を。
 そうしてそれは驚くべき冷静さを持って、猛々しく実行された。
 ここに来てからどれだけの時が経ったのか、もう解らない。その間に、何度天の頂きに到達したと思ったのかも。けれど、グレートヒェンによって自身の象徴が包み込まれたその瞬間こそは、紛れも無く天を超えたと言って良いだろう。それだけのものがその刹那に感ぜられた。彼女の中は狭く、肉体的には痛い程であったのだけれど、精神的なものは余りあるものであった。
 はぁ、とクリストフは吐息を付いた。殆ど満足と言って良かった。ここで果ててもいいと、定まらぬ頭で感じた。それ程だったのである。
 クリストフは、しかしゆっくりと腰を動かし始めようとした。果ててもいいと感じたが、出来るならば、何時までだって感じていたいのである。
 彼はグレートヒェンの背に両腕を回し、愛を囁きながら味わおうともした。
 と、そこで一つの違和を覚えた。何だろう、何かが違うと思い、それは直ぐに解った。膣だ。膣が狭いのだ。確かに最初の挿入も狭く感じたが、これは違う。
 はっとして、クリストフは腰を引いたが、その時にはもう既に遅い。
 何処かでスイッチが切り替わる音がした。
 同時に何かが潰れる音がして、ふと見れば一物が消えていた。
 何故か痛みは無かった。ぼんやりと、頭の奥で匂いが木霊している。腰元は血で濡れ、かつて勃起していた棒のあった場所は、今では赤い源泉となっている。既にその量は相当なものとなっていて、勢いは今も止まない。
 嗚呼これは恐らく助からないだろうな、とクリストフは独りごちだった。行き成りの事で何が起きたのか解らず、ただ呆然と腰を抜かしていた。
 その時、彼は在り得ないものを見た。これ以上、そうでないものは無いだろう。
 グレートヒェンが笑ったのだ。口元の端を僅かに吊り上げ、ベッドの上にしかと立ち上がり、クリストフの情け無くも痛々しい姿を見下ろしながら。
 その脚の付け根から垂れる血は破瓜のものでは当然無く、彼女を愛していた男の物であり、と、その残骸が押し出されて塊のままシーツに振るい落とされるや、グレートヒェンは雑音の少々混じった、可愛らしい鈴の声を上げた。
「御馳走様愛シイ人」
 視界霞むクリストフの前で、微笑みながら彼女は、いやそれは続けて言った。
「御馳走様愛シイ人御馳走様愛シイ人御馳走様愛シイ人御馳走様愛シイ人――」

全ては嘘だ。(Mehr Licht!)
 生地フランクフルト訛りで意味するゲーテ最後の言葉

ENDE


後書き『この後スタッフが美味しく頂きました』

 締め切り四日前に八枚まで書けていた原稿が締め切り当日になって六枚になっていた男、高名な『銀河ヒッチハイクガイド』の作者・ダグラス・アダムスは、締め切りというものに関して、この様に言っていたらしい。
「ぼくは締め切りが好きだ。びゅーんと来て去っていくあの音がいい」
 何とも気持ち良い言葉である。
 さてその言葉に倣って、という訳では無いが、この後書きを書いているのは、締め切り三時間後の事だ。編集者諸氏には実に申し訳無く思っているけれど、だが仕方ないでは無いか。びゅーんと来て去っていかれては。びゅーんと。
 実際の所ここまで遅れたのは、完成にまで話が二転三転しているからだ。どうもこのエログロナンセンスというテーマと自分は相性が余り良く無いらしく、今回の物語が練られるまで、相当な時間と最早書かれぬ物語を積んでしまった。
 最初に考えたのは、組み換え少女だ。手や足が棚毎に陳列されていて、お好きな少女を生み出せるという話だが、オチが浮ばず挫折してしまった。昇降機で塔を上がりながら次々に選別して行くというイメージは、また何処かで使いたい。次が、似た様なコンセプトなのだけれど、アラビアの魔人ジンをモデルとしたアンドロイドが案内嬢として出て来る話。組み換え少女が最終的にそれに至り、彼女に求婚して終わる所までは考えたが、テーマ性と雰囲気付けの為に採用したルビラッシュで熱意を削がれてしまった。で、その次が地球を孕む少女。環境に優しい向日葵機関で稼動する箱舟の中、地球を産んでは選別し、破棄してはまた産みを繰り返す少女の話で、ビジュアルとしては気に入っているのだが、小説として纏めるには難しかった。そこにある地母神的性質から考えたのが、謎の存在『ショウジョ』の話。夢で見たそれを男が追い続ける。ネタとしては悪くなく、小さな女を持つ漢字を出さないという言葉遊びも出来て途中までは愉しかったのだけれど、これも終わりが思い付かず仕舞いに。やはりゴールが見えていないと、どうにも難しく。で、後はあれだ、脳汁が湧いていたとしか思えない少女ライド。でもやってみたいんだよね、めきっと、ばこっと、変形させて。
 ともあれ、この様な紆余曲折を経て辿り着いたのが、この『油圧式悪魔』だ。この言葉が何処からとも無く湧いて来て、ざっと下調べして、ざっと書き記す事となったのである。いやはや正にびゅーんだ。
 と、因みにこの話は驚く無かれ、列記とした実話をモチーフとしている。
 時は十九世紀独逸での事。
 父親の書斎にあった、旧世紀の珍機械による悲喜交々な事件を纏め上げた中にあったのだけれど、1873年、ウィーン万博に発表するべく造られた性処理用自動人形があったらしい。首や手、後膣が蠕動する程度の機能を持っていたという。外観は蝋性、つまり蝋人形だったが、当時描かれたスケッチを見るに、余り上等な代物では無かった様だ。さり気無く絵師の愚痴らしきものもあった。まぁダッチワイフとは大概そういうものだろう。しかしクリストフ・リヒテンベルクという名の開発者は至って大真面目に、海軍辺りへ売り付けるつもりだった様である。何とも馬鹿な話だが、生真面目な変態で有名の独逸人は実際こいつを試し、評判は上々だったというから驚きだ。蝋臭いのと硬いのを我慢すれば、悪くない、と。それを我慢出来るか否かが問題だと思うがな。そしてとうとう正式採用(!)という所まで行ったらしいが、しかし悲劇が起きた。稼働中の事故によりある男の一物が……結局万博に発表されなかったのが全てを物語っていよう。
 まぁ勿論嘘だが、この様な感じで色々と込めたつもりなので、積極的に深読みして頂けると嬉しい。メフィストフェレスは悪臭を好む者とも意味する、とか。
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