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 現実と虚構の対立、対比と来て、お次は虚構(うそ)と現実(ほんとう)を綯い交ぜにして生きた男の物語、という訳で、ソダーバーグ×マット・デイモンの『インフォーマント!』を見んとす。

 国際的カルテルの事実を密告した為に、企業幹部と内通者の二重生活を強いられる事となった主人公マーク・ウィテカー。FBIの指示の元に諜報活動を行う彼は、しかしそれとは別の、ある犯罪を犯していた――実際に起こった事件を元にした作品だそうだが、基本的にはブラックコメディ・サスペンス。ノリとしては、コーエン兄弟の『バーン・アフター・リーディング』に近いかな? ソダーバーグだから、解り易い意味でのスタイリッシュさが溢れ出ており、兄弟程の深みは無いが、まぁ、これはこれという所か。

 ただあちらが、登場人物達が己の意思と判断で好き勝手に動き回った結果、映画を見ている側の人間で無ければ、何が何だかさっぱり解らない状況に陥ってしまったという(あの兄弟お得意の手法だろう)のに際し、こちらはすっかりお父さんというか、太ましくなられたマット・デイモン一人の言動によって、事態が何とも複雑怪奇なものへと変貌してしまっている様が描かれており、映画としては上にも言った様にそれ程のものとも思えなかったが、このウィテカーという男が、個人的に身に積まされた。

 人は何故嘘を付くのだろうか――衆目を集める為? 己が利益を得る為? 物事を円滑に進める為? 創作の喜びを感じる為? 廻りの反応が愉快の為? 誰か或いは己を、傷付けるもしくは傷付けぬ為? 隣人の、社会の、国家の、世界の正義の為? それが良い事だと考えた為? 妻や子供達、家族を守る為? 皆がそうしている為? 嘘を付く事が習慣付けられてしまった為? 嘘を嘘と理解していない為? そもそも何が本当なのか、解っていなかった為? 何もかもがぐちゃぐちゃになって、判断出来ていなかった為? どうしようも無く嘘を付かねばならないサガが人間にある為?

 私自身、嘘が好きな身であり、好き好んで嘘を付いては、嘘付きと呼ばれる事を愉しんでいたりするけれど――小説然り、このブログもある意味で然り――何故か、と言われると明白な答えは無く、だが強いて言えば、上に出した仮説の、全て何もかもがその通りなのだと思う――そして、マーク・ウィテカーという男の心理も、そういう事だったんじゃないか。そして多分、そんな嘘について自体、考えた事も無かったのではあるまいか、と。

 マーク・ウィテカー、狼少年が狼に襲われる事無く、狼が遣って来たと叫び続けながら、そのまま大人になってしまった様な男――終盤、その嘘の綻びが解ける様に、髭を反り、髪を失った彼の姿は、何とも惨めで弱々しい。そして、嘘を指摘された彼が、何が本当なのかと尋ねられた時に返した言葉『解らない』――その時のあの表情――うぅむ。私的に考えさせてくれる作品である。
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